―…もう…いい加減にしてよ!


あの日から、私とライバル*名前ちゃんは口を利かなくなった。
学校やピアノ教室ですれ違っても、挨拶すら交わさない。
気には留めるものの、別に改善する気もなかった。


「あーお腹いっぱい」
「私これ捨ててくるね」
「はーい行ってらっしゃい」

昼。
昼食を終えて、飲み終えた紙パックを捨てに席を立つ。

教室の後ろにあるごみ箱に紙パックを捨てて。
席に戻ろうと思った瞬間、後ろのドアから伊月くんが教室に入って来た。
見た所、昼練が終わった所かな。

伊月くんは私を見るとあ、と声を上げた。

「名字…ライバル*名前知らない?」
「えっ?」

突然伊月くんの口をついて出たライバル*名前ちゃんの名前。

「知らない、けど…どうして?」

言った途端、伊月くんは困った様な表情になった。
嫌な予感がした。

そして私の嫌な予感は…よく当たる。


「実は昨日…告白されたんだ、ライバル*名前に」
「そう、なの…」
「だからその返事しようと思ってさ。なのに見当たらないんだよなあ」

まさかライバル*名前ちゃんが告白するなんて、夢にも思わなかった。

ライバル*名前ちゃんが伊月くんと話しているのは、よく見かけてた。
そのライバル*名前ちゃんが告白なんて…もう返事は決まってるじゃん。

「……知らないっ」

それだけ言って、教室を出る。

「あっ、おい!名字ー!」



訳も分からず走って、図書室の前まで来る。

途端に、涙が溢れて来た。


―告白、告白、告白…


その言葉ばかりが、頭の中をぐるぐると回る。

バカだよ、私。本当にバカみたい。
ずっとずっと隠してきた。
友達*名前がいくら言っても、全部否定してきた。

素直になれば、すぐに気付けた事なのに。


私だって…


「好き…なんだよ…っ」







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