ライバル*名前ちゃんは伊月くんの方に楽しそうに走り寄る。

「ライバル*名前か」
「明日の風紀委員の身回り、あたしと俊になったよ!」
「そっかーじゃあ朝練は休まなくちゃだな」
「うんっ、一緒に行こー!」

そのライバル*名前ちゃんの視線が、私を捉えた。

「名前ちゃん」
「……」

昼休みの事があったばかりだから、思わず黙ってしまう。


「名前ちゃんて、今日ピアノ教室の日じゃないの?」
「…そう、だけど」
「教室行く前に家で練習しなくていいの?」

ああ、まただ。

せっかくなくなっていったもやもやが、また溜まっていく。

「勿論するよ、練習」
「だったら早く帰らなくちゃじゃないの?」


そしてプツンと、何かが私の中で音を立てて切れた。

「もう…いい加減にしてよ!」

突然そう言った私に驚いた表情を見せる、ライバル*名前ちゃんと伊月くん。
だけど、もう限界なんだよ…

「ピアノが下手だとか帰れとか…もうやめてよ」


くるりと踵を返して、帰路を走った。


「名字!」

後ろでそう叫ぶ伊月くんの声がしたけど…振り返らなかった。









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