ライバル*名前ちゃんは伊月くんの方に楽しそうに走り寄る。 「ライバル*名前か」 「明日の風紀委員の身回り、あたしと俊になったよ!」 「そっかーじゃあ朝練は休まなくちゃだな」 「うんっ、一緒に行こー!」 そのライバル*名前ちゃんの視線が、私を捉えた。 「名前ちゃん」 「……」 昼休みの事があったばかりだから、思わず黙ってしまう。 「名前ちゃんて、今日ピアノ教室の日じゃないの?」 「…そう、だけど」 「教室行く前に家で練習しなくていいの?」 ああ、まただ。 せっかくなくなっていったもやもやが、また溜まっていく。 「勿論するよ、練習」 「だったら早く帰らなくちゃじゃないの?」 そしてプツンと、何かが私の中で音を立てて切れた。 「もう…いい加減にしてよ!」 突然そう言った私に驚いた表情を見せる、ライバル*名前ちゃんと伊月くん。 だけど、もう限界なんだよ… 「ピアノが下手だとか帰れとか…もうやめてよ」 くるりと踵を返して、帰路を走った。 「名字!」 後ろでそう叫ぶ伊月くんの声がしたけど…振り返らなかった。 19 [戻る] |