「それでは、オーディションの結果を発表します」 次の日の朝のホームルーム。 自分の耳を疑った。 信じられない…って、そう思った。 「このクラスのピアノ伴奏者は―…」 まさか、まさか私が… 「…―名字 名前さんに決まりました」 伴奏者に、選ばれるなんて。 「えっ!?」 あまりにも驚いて、思わずガタンッと席を立ってしまう。 「嘘…」 「本当よ。おめでとう名字さん。頑張ってね」 「は、はあ…」 その途端、パチパチと沸き起こる拍手。 拍手をしてくれているのは、クラスの皆だった。 「頑張れよー」とか「おめでとう!」とか、そんな声まで聞こえてきて。 夢じゃないんだ…って、ようやく自覚する事が出来た。 ゆっくりと席に着いたと同時に、前の席の彼―…伊月くんが、くるりと後ろを向いて来た。 「おめでとう名字!」 あまりにもの伊月くんの勢いに、一瞬たじろいでしまった。 「あっ、うん…」 「挑戦して良かったじゃん!」 「…ありがとう」 「え?」 「ありがと。挑戦させてくれて」 伊月くんはきょとんとした表情を浮かべたかと思うと 「どーいたしまして」 またにっこりと、笑った。 「じゃあオレも指揮者頑張んないとなー…一緒に頑張ろうな、名字」 「うんっ!」 あまり思い入れのなかった合唱コンクールが、今回はすごく楽しみになった。 08 [戻る] |