02
「ったくまた泣かせやがって」
その様子を見ていたアレックスが呆れたように言う。
タイガもタイガで少し困ってはいるものの、アレックス同様の表情がうかがえた。
「お前アメリカでもよく名前泣かしてただろ」
「…オレのせいみたいな言い方止めてくれるかな、アレックス」
「実際タツヤのせいだろ?お前が怪我したの見て名前が泣くんだから」
うーん…そう言われると何も言い返せない。
アメリカにいた頃、幾度となくオレが相手との殴り合いの末に怪我をして帰ると、
決まってその怪我を見た名前が今みたいに泣き出したのは事実だから。
とは言っても、小学生くらいの話だけど。
オレはアレックスとタイガに苦笑してから、視線を名前に戻す。
「ほら名前、落ち着いて。大丈夫だから」
「誰っ!?」
「え?」
「誰にやられたの?」
「それは…」
「絶対許さない!タツヤの事怪我させるなんて…許さない!私が仕返ししてくる!」
その言葉を聞いて、不意に名前が愛おしくなった。
年齢を重ねるにつれて、喧嘩なんかしなくなって。
それに伴って名前も泣かなくなった。
こんなに人に心配して貰うのはいつぶりだろう。
思わず名前の頭に手を置けば、
ずっとうつむいていた名前がようやく上を向いてくれた。
「名前、ありがとう。もう十分だよ」
「え?」
「オレを殴った奴は、きっとこんな嬉しい気持ちになった事ないんだろうね。
こんなに心配して貰って、もう十分仕返しして貰った気分」
「タツヤ…」
ぶわあっ、と名前の瞳に新しい涙が溜まって。
あ、逆効果だったかな…と思う頃には、
名前はオレの肩に顔をうずめてより一層激しく泣き始めていた。