05
「大丈夫スか?」
「うん…ホントごめん」
涙を拭いて上を見上げれば、困った表情の黄瀬と目が合った。
「ねぇ、黄瀬」
「何スか」
「私さ、悪い子なのかな」
「…え?」
「私が悪い子だから、ダメなのかな」
口をついて、ポロリと出た本音。
ごめん、ごめんね黄瀬。
こんな事言ったって、困らせるだけなのに。
困らせるだけって分かってるのに…口に出してごめん。
案の定黄瀬はしばらく私を見て、今にも泣き出しそうな顔になった。
私も黄瀬を見つめ返すと、黄瀬はゆっくりと首を横に振る。
次の瞬間、ポン、という温かい感覚と共に、黄瀬の右手が私の頭を撫でていた。
「黄瀬?」
「○○っちは良い子っスよ」
「…どうかな」
「多分…○○っちが大人になったんス」
「え?」
意表を突いた言葉に驚いて改めて黄瀬を見れば、
黄瀬は泣きそうな顔のままそれでも笑顔を貼りつけて、言葉を続ける。
「ちっちゃい頃は、親の影の部分なんて見えてなかった。
それが○○っちが大人になって…気付くようになっただけっスよ」
「知ってたの?」
驚いた。
親の喧嘩の事で落ち込んでるなんて、一言も言ってないのに。
「どんだけ家近いと思ってんスか」
「…はは、家の壁薄すぎでしょ」
なーんだ、バレてたんだ。
やっぱり黄瀬に隠し事は無理。
ずっと一緒で、一番近くだったのが…黄瀬なんだから。
言って笑ったら、またじわりと涙が出てきた。
その途端、黄瀬は私の頭に置いた手をわしゃわしゃと動かす。
「わっ…もう、髪型崩れる」
「またさ」
「ん?」
「また、何でも言って欲しいっス」
「…うん。ありがと」
「○○っちが誰よりも頑張ってんの、オレは知ってるっスよ」
「……」
「オレの前では、本音言って良いスから」
「…うー…っ」
それから私が黄瀬に抱きついて大泣した事は、言うまでもない。
大好きな、大好きな…一番近い人の隣。
ここが、私の場所。私が唯一、素直に涙を流せる場所。
NAMIDAplace
(ずっと一緒に居ようね)(当たり前じゃないスか)
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