02



あ、そーだ。年越しそば準備しなきゃ。

そう思ってのっそりとこたつから出る。

我が家の年越しそばは毎年インスタント。
いつもはお母さんがお湯を入れてくれてたけど、今年はいないんだった。
こんな場面で母のありがたさを実感しながら戸棚を開ける。と、

「げ」

戸棚が、空だった。



『おかーさん!年越しそばどこに置いてあるの?』

そうメールすれば、数十秒後に

『ごめん、今日買おうと思ってたから買ってないよ。
今年は諦めるしかないね』

という返信。


嘘…嘘…嘘だあー

年越しそば…私が物心ついた時からずっと欠かさず食べてたって言ってたのに…
こんなところで年越しそばの連続記録をストップさせちゃうの!?
そんなの嫌だー!


ふと時計を見る。

11時32分。

ここから一番近い店は…徒歩約7分くらいのコンビニ。
走れば5分ってとこ。
往復で10分、買う時間とか考えて行って帰って15分弱…
で、インスタントは3分だから…

よし、いける!


思い立ったら即行動。


私はコートを羽織ってすぐさま家を飛び出した。






「ありがとうございましたー」

店員の言葉を背に受けながらコンビニを飛び出す。
携帯で時間を確認すれば…11時40分。
なーんだ全然余裕じゃん。

うへへへーと心の中で笑いながら少しゆっくりめに歩いて、家は目前。


その時だった。


「…名字?」


突然、後ろから声が聞こえて来た。

それは紛れもなく私の名字で。
何なんだよこの忙しい時に!
さっきの余裕はどこへやら、内心で悪態をつく。

だけど呼ばれたんだから振り向かない訳にもいかず。

「何?」

こっちは急いでるんだよコノヤロー
という雰囲気がなるべく伝わるように早口で返事をしながら振り向けば…

「あ」
「偶然だな」

右手を上げて近付いてくるサラサラストレートの黒髪男子。
幼なじみの伊月俊がそこにいた。






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