06
「○○っち」
「…黄瀬」
あの後友達と別れて教室に戻ると、黄瀬は既に自分の席に着いていた。
時計を見れば、昼休みも10分程度しかない。
一緒にお弁当を食べようとしていた子たちはもう食べ終わったらしく、
お手洗いにでも行ったのか姿はなかった。
とりあえず少しは食べ物をお腹に入れようと思って、お弁当を広げる。
その途端、私の机の端に紙パックのジュースが置かれた。
「黄瀬…?」
「ノートのお礼」
「え、あれ冗談だったのに…」
「それと、さっきのお礼」
「私大した事してないよ」
「○○っちがいなかったら、オレどうなってたか分かんなかったっスよ」
大げさだなあ。
そう言いながらありがたくジュースは受け取って
袋からストローを取り出してパックにストローを差す。
じわじわと口の中にジュースの甘みが広がる。
頭を巡るのは、さっきの友達の言葉。
…名前の気持ち、涼太に伝えて
もう、この気持ちを伝える事は、許されないと思ってた
だけど、伝えて良いと言ってくれる人がいて
目の前には…君が居る
「黄瀬…」
「どうしたんスか?」
私のせいで、いっぱい遠回りした
優柔不断な態度のせいで、友達まで巻き込んだ
でも、もう一度チャンスをくれるなら
今度こそ、私は君に―…
伝えたいんだ、この気持ちを。