05
取り残されたのは、私と黄瀬。
しばらくお互いの顔を見て、2人してほぼ同時にその場に座り込んだ。
「何やってんスか○○っち…」
「それはこっちのセリフだよ…何でこんな事になってんのよ」
「まあ、モデルやってると色々あるんス」
「そ、なんだ…」
「涼、太…」
屋上に友達が入って来たのは、そんな時だった。
「涼太…大丈夫?」
「あー大丈夫っス。○○っちのおかげで」
「……」
さてと。邪魔者は退散しなきゃ。
そう思って腰を浮かそうとすると…
「名前…」
突然、友達がくるりとこっちに振り返った。
「…ちょっと、いい?」
「え?あ…うん」
友達に連れてこられたのは、体育館裏だった。
「どうしたの「名前」…え?」
友達は私に向き直ると…
「…ごめん、」
絞り出すように、そう言った。
「名前は、いつも優しくて、いつも他人を優先するよね」
「え…?」
「私、全部…知ってたんだよ」
友達の顔が、苦しそうに歪む。
「名前はいつも、涼太の話すると笑顔になってた」
「……」
「涼太は、名前と話してる時が一番楽しそうだった」
「そんな事…」
「だからね、名前が誰を見て、涼太が誰を想ってるのか…知ってたの」
はらりと
友達の頬を、涙が伝わった。
「それでも私は、涼太が欲しいと思った。
名前ならお人好しだから、好きだって言えば絶対協力してくれるって…
私は、最初から分かってた」
あまりにも突然の事に、驚いて声が出ない。
「でも私は…無理だった」
「え…?」
「さっき名前は迷いもせず飛び込んで行ったけど…私は怖かった」
「見てた、の?」
「……うん」
涼太には…名前しかいないんだよ。
そう言って、友達はふわりと笑った。
「だから…名前の気持ち、涼太に伝えて」
「…そんな、私はっ」
「私は…分かってるから」
「…ッ、」
私まで涙腺が緩んだ。
「…ごめん」
「何で名前が謝るのよ。悪いのは私だよ」
「そんな事ない!」
「ねえ、名前…もし良かったら、また友達になってくれる…?」
うかがうような、友達の表情。
…そんな事…
「当たり前じゃん。もともと私たち、友達だよ」
「名前…」
友達と抱き合って。
久々に、胸のつかえが取れたような気がした。
久々に、心から笑えた気がした。