04





両親が喧嘩をした次の日の朝は、最悪の雰囲気だ。

今日も私の「行ってきます」の声は、誰の耳にも入らなかった。


何だかカバンが重く感じる。
そう思いながら、家から出た。

そしたら

「あ」
「あ」


私を見て驚いて目を見開く長身。
さらさら揺れる金髪、片耳に朝日を浴びて光るピアス。
それを見て、私も相手と似たような反応を示して立ち止まる。

嘘…信じられない。
朝にばったり会ったのなんて、いつぶりだろう。
ずっとずっと、会えてなかったのに。
今日は、朝練ないのかな。
会いたいって思った次の日に会えるなんて…神様って実在するのかも。

そんな事を考えていたら、沈黙が数秒続いて。

先に言葉を発したのは、相手―…黄瀬だった。

「○○っち!」

へらっ。
そんな効果音がつきそうな笑顔と共に、
こんな近距離にいるのにも関わらず私に向かって手を振る黄瀬。

「黄瀬…」
「おはようっス」
「……」

いつも雑誌に載ってるのとは、違う表情。
おひさまみたいな、昔とちっとも変らない笑顔。
だけどどこか間の抜けた…見慣れた顔。

その顔を見た瞬間…ぐにゃりと視界が揺れた。

「…ッ、」
「ちょっ…○○っち!?」

ぼろぼろと、一度溢れ出した涙は止まらない。

何やってんの私。
黄瀬を見た途端泣くなんて、馬鹿みたい。

そう思って必死に止めようとするけど、より一層涙が出てきて。
そんな様子の私を見て、黄瀬は両手を困ったように動かしながらおろおろとする。


「ご、め…」
「どうしたんスか!?」
「…安心、して…」
「へ?」

無意識のうちに私の口をついて出た言葉。
不意を突かれたような様子で黄瀬は眉を寄せるけど…
そう、ホッとしたんだ。黄瀬の顔見たら。

色白の肌とか、長いまつげとか、切れ長の目とか。
全部全部、昔のままで。
最近話してないとか、昔より黄瀬が遠くなったとか…そんなのは関係なかった。
黄瀬を見たら、ものすごく安心した。






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