03
「名前…名前っ…!」
そんな友達が涙目で教室に入って来たのは、お昼休みの事だった。
クラスの子とお弁当を広げると同時に聞こえて来た友達の声。
珍しく呼ばれた名前に、懐かしさを感じる。
友達は小走りで私の机の隣まで来た。
黄瀬に用じゃないんだ…と少し不思議に思いながら黄瀬の姿がない事に気付く。
購買でも行ってんのかな。
そんな事を思いながら視線を友達に直した。
「どうしたの?」
「涼太がっ…涼太が…」
「え?黄瀬が何?」
「涼太が…殺されちゃう…っ」
「…はっ!?」
―…殺されちゃう
あまりにも物騒な響に、思わず手が止まる。
「えっ…ちょっ、何があったの!?」
「購買行ったらたまたま涼太を見かけて…」
やっぱり購買いたんだ、黄瀬。
「涼太に話しかけようとしたら、涼太が男子5人くらいに囲まれて…」
「え、何で…」
「分かんないけど…」
「それでどうしたの!?」
「屋上に連れてかれて…」
どうしよう…そう言ってうなだれる友達。
それを見て、ふつふつと怒りが込み上げて来た。
「…んで…」
「え?」
「何で追いかけなかったの!」
「え、だっ、だって…」
「あんた彼女でしょ!黄瀬が心配じゃないの!」
「心配に決まってるよ!でも、追いかけたら私まで…」
「……ッ、」
ガタン、と席を立って
「ちょっと行ってくる」
一緒にお弁当を食べようとしていた子にそう言って、教室を飛び出す。
「あ、待って…名前!」
友達の声も、耳に入らなかった。