02
「○○っちーノート見せて下さいっス」
授業終了後。
突然くるりと後ろを向く金髪。
「黄瀬…授業寝てたの?」
「起きてたけど…黒板よく見えないんスよ」
「えーそれバスケ選手としてどうなのよ」
「バスケには事足りてるから大丈夫っス」
可愛くない事言ってみるけど
結局ノートを貸すなんて事は黄瀬も私も分かってて。
「しょーがない。ジュース一本で良いよ」
「何スかそれ」
言いながらノートを黄瀬に渡す。
あの日から―…黄瀬に彼女が出来た日からも
私はわりと黄瀬と話してる。
てっきり彼女が出来たらもうほとんど話さなくなると思ってたけど。
決してそんな事はなくて。
「ありがと」
「どーいたしまして」
だけど最近―…
「あ、そう言えば○○っち」
「何?」
「オレさ「涼太!」
…"彼女"が今まで以上に黄瀬に会いに来るようになった。
「涼太ー今私のクラス数学だったんだけどね、すごい難しかった!」
「オレの方は英語だったっス」
「あー英語も難しいよね!」
私のところは、ガン無視。
以前は本当に仲が良くて、クラスが離れてても毎日話していた友達なのに
今は私じゃなくて、黄瀬とだけ話しに来る。
何となく、悲しかった。
私と、黄瀬と、友達と。
別に3人で仲良く出来る未来を夢見ていたわけじゃない。
こうなることだって、少なからず予想は出来たはずだ。
それなのに、この状況を作ったのは―…
…―全て、私自身だから。
「○○っち!」
そんなことを考えながらボーッとしていると
突然、黄瀬が私の方に向き直った。
「へ?」
「ノート、後で返すから」
「あ…うん」
何事という感じで黄瀬と私を交互に見つめる友達。
黄瀬…バカ。
黄瀬がこうやって彼女といるのにも関わらず私に話しかけてくるから
どこか喜んでる自分がいて
だけどどこかで、苦しい位の胸の痛みを覚える自分もいて。
ねえ、もうこんな状況なら
いっそ黄瀬が話しかけてこない方が良いかもしれないよ。
優しくするから
どこかで期待する自分がいるのに。
ホント、バカみたい。
バカは…私だね。