04
「ふー、一件落着…っと」
机に戻ってから大きく伸びをする。
そう。無事私と友達は彫刻刀を持ってくる事に成功したのだ。
「メガネを返せ!」
「緑間が悪いんだからね!てか私のことあれこれ言う前に緑間もさっさと彫りなよ」
「そうだぜ真ちゃん。オレらもそろそろやんねぇとヤバいって」
高尾がポンポン、と緑間の肩を叩く。
それを見届けてから私は彫刻刀1本を手に取り、彫り始めようとした。
まあ、そろそろ良いかな…
はいどーぞ。
そう言って緑間にメガネを返す。
このタイミングが、最悪だったとも知らずに。
あっという間にメガネを装着した緑間は、彫刻刀を持った私を見ると…
「彫刻刀を手離すのだよ!」
「へっ?ちょっ…」
私の手の中にある彫刻刀を無理矢理引き抜こうとした。
緑間の力が加わったせいで彫刻刀の切っ先の方向は変わって…
ザクッ、
「ったあ!!」
途端、左手に感じる激痛。
見れば左手の甲に赤い一本線が出来ていた。
その線からじわじわと血が滲みでてきて、ぽたりと机の上に落ちる。
「ちょっ…名前、大丈夫!?」
友達が私を見て驚いた声を出す。
「大、丈夫…」
「だだだ大丈夫か名字!?」
「緑間…だから大丈夫だって「保健室に行くのだよ!」…えっ?」
聞き返してる暇なんてなかった。
緑間は私の右手を取ったかと思うと…
「高尾、オレは名字を保健室へ連れて行く」
「へ?あー…おう」
保健室に向かって、走り出した。