※ED後のおはなし





 ラムダとの一件が解決した後、ゆっくりではあるけれど、世界は確かに日常へと戻っていく。雲ひとつない青空の下で、私はラントとしばらくお別れをしようとしていた。
 街並みに背を向けて、一歩ずつ離れていこうとするその後ろから、不意に私の歩くペースより速いスピードで続く足音が聞こえた。

「シェリア!」
「……あ、アスベル?」

 馴染み深い、そしてだいすきなその声に振り返ると、案の定そこにいたのはアスベル。やはり走ってきたのだろう、彼は少しばかり息を乱していた。
 わざわざ走ってまで追いかけて来なくたっていいのに。そうした申し訳なさを感じる一方で、こうして走ってきてくれたことに嬉しさを覚えたことも事実、で。

「ごめん! 見送り、間に合わなくて……」
「別に気にしなくっていいのに……アスベルだって、領主の仕事があるでしょう?」

 それに、永遠の別れってわけでもないじゃない。そう言って私がくすくすと笑うと、アスベルも「それも、そうだな」と赤茶色の癖っ毛を掻きながら笑った。

「でもさ、次、いつ会えるか分からないだろ……だから、」

 一目会っておきたかったんだ、と。視線を泳がせながらアスベルが言う。大した意味じゃないのかもしれない、でも、それでもやっぱり嬉しいと思ってしまう。

「大丈夫よ。すぐ、帰るわ」
「ああ、ラントで待ってる……またな、シェリア」
「ええ、また」

 振られた手に、少しさびしさを覚えつつ、手を振り返す。ゆっくり歩いているはずなのに、離れていく距離がやけに速く感じるのは、どうしてかしら?
 この気持ちを紛らわせるために、次に彼に会うときのことを考えながら、私はだいすきな場所と、だいすきな人に「またね、」と告げた。





うん、またね




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10.09.05
title by:コランダム
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