隣で歩いてる気怠げで金髪青眼の男の人は、わたしの恋人。
 普段の歩くペースはもっと速いはずなのに、わたしに合わせてくれているのだろう、少しゆっくりとしている。それが何だか嬉しくって、歯痒くって、ちょっとくすぐったい。

「なんで笑ってんだ?」
「……なんでもないでーす」

 顔を緩めるわたしに、笑いかけてくれるデンジさん。そんな彼の笑顔が、わたしはすき。だいすき。

「これからどうする?」
「あ、新しくできたカフェにでも行ってみませんか?わたし、行ってみたかったんですよ」
「分かった、行こう」

 人が賑わう繁華街。握った手から伝わる体温のあたたかさ。そんな他愛ないことが、わたしにはすごくしあわせに思えた、のに。

「……あ、朝、」

 靡くカーテンのはためきでわたしは目を醒ました。どうしようもない切なさ。
 そんなしあわせなおはなしは、朝になったら消えてしまったおはなし。

「あーあ、」

 さびしさと一緒に、なんだかちょっと涙が溢れた。






(泡になって消えてゆくよ)



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2011.02.01(初出)
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