ミナキくんはエンジュにはいない。そんなことは分かっているのだけれど、新しい年を彼と一緒に迎えたいとかそんなことをぼんやりと考えてしまう。
 深とした夜だけれど、神社だとかそういうところに行ったらきっと賑やかだ。あの子、コトネちゃんはヒビキくんと一緒に過ごしているのだろうか、なんて。だったら羨ましいな。

(……なんて、)

 思ってみたところで意味は無い。ミナキくんはきっとスイクンを追いかけてるか実家だろうね。毎年そうだから僕には分かる。けれどちょっと寂しい。

「ごめん、ゲンガー……君がいるのにね」

 心配そうな視線を寄越すゲンガーに僕は申し訳なさを覚えた。けれど、寂しいんだ。

「……あ、」

 年が変わった。
 気紛れでつけていたテレビ画面の向こうでは、知らない人たちがなんだか嬉しそうにしている。うるさいな。
 やけに悔しくてなって電源を切ると、部屋は一気に静かになった。そこで、こん、こん、という微かな音が鳴っていることに気付いた。窓だ。
 少しだけ高鳴った鼓動に「期待はするな」と言いながら窓に駆け寄ると、そこにいたのはやっぱり彼だ。

「よ、マツバ」
「……どうしたの」
「特に用ってわけではないんだが……今年最初は、マツバに会いたくてな」

 そう言ってニカッと笑うミナキくんに僕は、心の中で「僕もだよ」と言った。





2010→2011




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2011.01.01(初出)
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