うーん、と両腕を上に伸ばしてグッと力を入れてみると、なんだか珍しいくらいに清々しい気分になった。布団から這いずり出て窓を開けると、ぽかぽかとした穏やかな空気がなだれ込んでくる。 空は、晴天。雲一つない綺麗な水色が切り取られた四角として自室の窓を支配している。 散歩にでも行こうかななんて、また僕にしては思いつかないようなことが頭を過ぎる。普段ならたぶんしないと思う。いや、絶対しない、かな。 「ミナキくん、ねえ、ミナキくんってば」 隣の布団で寝ていたミナキくんをやわやわと揺する。けれどミナキくんはううーん、なんて唸り声をあげて寝返りをうったきり、またすーすーと息をしていた。彼はまだ朝が来たのも知らないくらい心地良さそうに眠っている。つまらない。 「ミーナーキーくーん!」 「……いたっ!」 ぼっすん、と腹の辺りを叩いてみたならばミナキくんはびっくりして目を覚ました。起き上がったときに見えたその表情、ほんと傑作。はっとして頭を掻いて呆れたようにミナキくんは僕に視線を寄越した。 「どうしたんだ」 「散歩、行こうよ」 なんだ? マツバにしては珍しいな、なんてミナキくんは笑った。そう、僕もそう思うよ。 軽く身仕度を済ませて外へ出てみると、やはりあたたかい。空の水色がやけに光って見えて思わず目の前に手を翳す。要はまぶしいんだ。きらり、白んだ太陽が仄かなぬくもりとして身体をあたためてくれる。 「あったかい、ね」 「そうだな」 「……あ、」 「どうした?」 あったかいと思った、道理で。思わず洩れた感嘆の声に首を傾げたミナキくんに、僕がその理由を指して示すと、彼もまた「ああ、そうか」って納得したようだった。 「もう春だね」 「……だな」 そう言って僕らは、静かに春を告げているあの花を見上げて微笑んだ。 はるる (春に、なる。) -------------------- 2011.03.18 |