スイクン捕獲の手助けをしてくれるよ、とマツバが私に貸してくれた新しい手持ちが入ったモンスターボールを見遣る。中ではゴーストがリラックスしたように伸びをして、それからうとうとしていた。見ているだけなら愛嬌があって可愛い。
 しかしこいつ、なかなか厄介だ。

「頼んだ、ゴースト!」

 放ったボールから現れたゴーストは私をじろりと見ると、攻撃するのだ……私を。命令もお願いも殆ど無意味でこいつは私に突っかかってくる。なぜだ!



 なんて話をマツバにしてみたら、当の本人はへらへらと笑っていた。

「……マツバ、私のスイクン捕獲の邪魔をしたいのか」
「ちがう、そうじゃなくて」

 そう言いながらもくすくす笑うマツバは、私にゴーストをボールから出すよう言った。私がゴーストを出してやると、ゴーストはとても嬉しそうにマツバの周りをふわふわと漂った。
 この感じは、どこか覚えがある。――そうだ、私だ。
 私がマツバと一緒にいるときの気持ちや態度と似ている、ような気がしたのだ。

「あのね、ミナキくん」

 この子は僕が一番可愛がってて、そして僕にすごく懐いているゴーストなんだ。この子は僕がだいすきなんだよ。だから、この子には分かるのかもね。

「何が?」
「好きな人が大好きな人を」
「……なっ?!」

 少しだけはにかみながら言うマツバに、不覚ながら心臓が跳ねた。特に意識もせずにそういうことを言ってくるからこいつは怖い。それからマツバは言葉を続ける。

「同病相哀れむ、って言葉があるくらいだからさ。上手くいくかなって思ったんだけど」
「……」
「逆にゴーストは、君に嫉妬しちゃったみたいだね」

 僕はこの子をミナキくんと同じくらいすきなんだけどなあ、なんてマツバが呟いた。ガタリ、と音を立てて立ち上がったのは、紛れもなく私だ。

「私が一番じゃないのか!」
「……嫉妬しちゃった?」

 悪戯っぽく笑うマツバに、一杯食わされたのだと気づいて赤面する私をゴーストも一緒になってケラケラと笑っていた。

「まあ、さ……二人とも、上手くやってよ」

 僕からのお願い、なんてにっこり笑いながら言われたら、私も(恐らくゴーストも)素直に言うことを聞くしかないのだった。
 それからのゴーストと私のコンビネーションは言うまでもないだろう。

「お互い、必死なんだぜ」

 ぼやいた私に、ゴーストも小さく頷いたような気がした。





小さな嫉妬





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2011.01.15

ミナキのゴーストはマツバから借りたもので、でもってゴーストがマツバにぞっこんでミナキに反抗的だったら萌えるよねって私得文章でした*^p^
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