※オーバとデンジ





「デーンージ!」
「……暑苦しい」
「そんな邪険に扱うなって」

 俺がいつもやってくると大抵、こいつは眉を顰めてあからさまに嫌そうな顔をする。けれどそれにももう慣れたし、この表情は別に(たぶん)俺を本気で嫌がっているわけじゃないことも分かっている。だからこいつの仏頂面も多少は愛着を持って見れるわけだ。だけどこいつの笑う顔も正直見たい、わけで。

「ほら、今日も昼飯作ってきてやったから」
「……ん。サンキュー」

 差し出した包みはデンジのためのお弁当。機械弄りに没頭するとすぐにこいつは食事を疎かにする。それで以前、栄養失調で病院送りになったことはナギサシティでも有名なはなしだ。それ以来俺は、リーグの仕事の合間を見てはこいつに昼飯の差し入れをしてるってわけだ。
 振り返って包みを受け取るデンジは相変わらず無機質な表情を浮かべてはいるが、俺にしか判らないほどではあるが微かに頬を緩めて謝意を述べた。

「すぐ食えよ。あとでとか言うな。今すぐ作業を止めろ」
「えー」
「えー、じゃない。そうやってあとであとでって言っててお前はいっつも食べないだろ」
「……」
「なんだよ」
「お前は俺の何なんだ」
「何なんだ……って、親友だろ」
「てっきり俺の母さんだって言うのかと思ったよ」

 溜め息混じりのデンジの声。母さん、か。まあそれも悪くはないよなとか思ってしまう俺がいることもまた事実。
 というのも、こいつの面倒を見たりご飯をあげたり……そんなことをしてやるのも、実はこいつがいとおしいから、なんて、さすがに照れくさくて言えないけど。





たくさんあげるなら
がいい

(こんなまどろっこしいモノばっかじゃなくてさ、もっとコトバを、あいのコトバを。)


「……ごちそうさま」
「美味かったか?」
「ああ、サンキュー」





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10.09.05
title by:空想アリア
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