流れ星に願い事をすると叶うかもしれないなどと、誰が言い出したのだろう。単なる化学物質の塊が燃えて死んでいく、その瞬間に願いを捧げるなんて、非科学的で非効率だ。
 そんな人間のエゴに使われたその星は、まさに生贄だった。
 暗闇にちらちらと輝く星は、確かに燃えてそして燃えたものを反射して浮かんでいると、どこかの本に書いてあった気がする。

「あらジューダス。どったの、こんなところで」

 キンとした甲高い声はハロルドのもの。手をぱたぱたとさせながら、くしゃりとした悪戯っぽい笑顔を浮かべて僕の後ろに突っ立っていた。

「もしかして流れ星に願い事? あんたもなかなかロマンチストじゃない」
「……僕は、」

 そんなんじゃ、ない。そう言おうとして口を噤む。煌めくあの星を生贄に捧げてまで願いたいことが、あったのだ。非科学的とか非現実的だとか、そんなものはどうでもよくて、願いたいことが。
 それは別に僕が死なないようにとかシャルに帰ってきてほしいとかマリアンを守ってくれとか、過去に向いたベクトルなんかではなくて、単に。

「カイルでしょ」
「な…っ?」
「見てれば分かるわよ。あんた、パーティのみんなを大事だと思ってるけど、中でもカイルが特別に大切みたいね」
「!」

 どうやらこの天才科学者には全部お見通しらしい。いつもならば否定の言葉を吐けるはずなのに、このことに関しては否定することができなかった。諦めて肩を竦めるとハロルドは満足そうに、くしゃりと意地悪く笑った。
 別に、僕が生きたいだとか誰かを生き返らせてくれと願いたいわけじゃない。そんなもの、星に願ったところで叶えてくれるわけがないのだから。
 過去の要素はどれほど願ったとしても書き換え不可能なのだから。いっそ願うのならばそう、真っ白な未来へ向けて。
 僕が星に願うとするならば、ただひとつ。

「……あいつが、健やかに生きてくれればそれでいいんだ」

 呟いた声は小夜に吸い込まれて消えていった。





星屑と現実
星に願うとするならば、未来へ向けて





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2010.12.27

おじとして、それからジューダスとして、カイルを大切に思うジューダス萌えなわけですよ。
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