※死ネタではありませんがそれに近いです注意!





 白いカーテンがふわりと春の風に靡いた。一緒に流れた金糸が色素の薄い皮膚に重なる。風で散らばる髪をそっと拭ってやると、触れた皮膚を通して指先から確かなあたたかさが伝わった。

(……まるで死んでるみたいじゃねーかよ)

 ぴくりとも動かないデンジの肢体を見ていると、そう思わずにはいられなかった。けれど確かにこいつは自分の力で息をしてて――今も生きてるんだ。だけど医者は、こいつがもう一度目を開くことも笑うことも、もう諦めた方がいいと言った。おかしいよな。
 俺はというと、その話を聞いたとき頭が真っ白になって訳が分からなくなった。だって小さい頃から一緒に笑って泣いて喧嘩して――そうやってずっと過ごしてきたんだぜ? これからだってそのつもりだったんだ。ずっと一緒だって……なのに。

「こんなのって、ないよな」

 眠ったままのデンジ。確かに息もしててあたたかくて柔らかいままなのに、そんな当たり前のことがもう、一生できないかもしれないなんてさ。そんなお前をおいて、俺だけ笑ったりして生きてくなんてそんなこと、できるわけないだろ。
 だからさ、決めたんだ。お前が目を覚ますまでずっと、ずっと待っててやるんだ。
 たとえばもしデンジが起き上がったら「どんだけ寝てりゃあ気が済むんだよ、莫迦」と文句のひとつでも言ってやるんだ。それから「おはよう」と言ってあいつを抱きしめてやろう。あいつはきっと寝ぼけ眼を俺に向けて首を傾げるのだろう。それでもいい。全然構わない。
 その可能性がゼロじゃない限りずっと、ずっと待ってるから。だから、だから。

「頼むから、目を覚ましてくれよ……デンジ、」

 零れた声が静かな病室に寂しく響いた。





境界線





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2010.10.12

ツイッターでのネタより、病院舞台のせつないオデンでした。
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