ー♪ ー♪

 滅多に鳴ることなどないメロディーを吐き出しながら携帯が震えた。これはオーバ専用の音色。
 我ながら女々しいことをしてるとは思うけど、鳴るはずのない知らせに無意味な期待をするのはもう、疲れたんだ。だから俺は鳴らないことを前提に、あいつだけのメロディーを設定した。けれど今、それが鳴っている。夢か、これ。
 けれどディスプレイを確認したら、間違いなくオーバからのメールだった。少しだけドキリと気味悪く脈打った心臓はさておいて携帯を手に取る。

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From:オーバ
title:(no title)

明日、帰る
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 たった一言。明日帰ってくるとだけ述べた、短いメール。タイトルも記されず、たったそれだけの内容。
 何なんだこの糞アフロ! ずっと連絡も寄越さないくせに、久々に寄越したと思ったらこれだけか。
 あいつに言いたいことは、それはもう、たくさんあったはずなのに、いざというと文字の羅列には表せない。ボタンの上で指が行く宛もなく惑う。嗚呼悔しい、口惜しい。とりあえず書けるだけ思いついた文字を並べていってみる。無意味で無機質な文字が液晶にずらずら、ずらり。

「……」

 或る一瞬でそれももうなんだか面倒臭くなって、並べた文字の無意味さに嫌気がさして、クリアボタン。溢れた文字が刹那に葬られた。あーあ。
 結局文句のひとつも言えなくて、当たり前な言葉だけを液晶に並べる。

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To:オーバ
title:(no title)

待ってるから早くしろ、糞アフロ
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 送信完了。行き場がなかったもやもやは液晶の中で泡沫となって消えて、ドキリと変に脈打った心臓が、少しだけ穏やかになった気がした。





言いたいことはたくさんあるけど、帰ってくるから、帰ってくるなら、
それでいいじゃないか





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10.09.08
title by:花洩
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