※お題:二十三夜待ち/ミナマツ





陰暦二十三日の夜半過ぎに月待ちをすると願いごとが叶うんだって、どこかの空の本に書いてあった。今更そんなことを完全に信じるような年齢でもないけれど、月を待って願いごとをするなんて、なんだか素敵だね、と思うんだ。
だから願いごとをしてみようと、僕は夜――二十三夜に月待ちをすることにしたのだった。

「……っ、寒いな」

エンジュの夜は思ったよりは寒い。ブランケットは持ってきたけれど気休め程度、否、気休めにすらなっていなかった。寒い。何より、一人でいることが僕には寒く感じられた。仕様がないので、自分の肩を自分で抱いては震えが止まるのを待つ。

(それにしても、)

寂しい、なあ。ミナキくんは相変わらずスイクン探しでエンジュには帰ってこないし、たまにはゆっくりお話しできないかな、なんて無理か。だって彼はそんな人間じゃないもんね。スイクンという目的に向かって一直線、一途というか何というか。僕は、追いかけてもらえる君が羨ましいよ。

「……ミナキくん、」
「なんだい?」

ばさっ。

いるはずのない人の声がして、視界が真っ暗になる。元々夜で暗かったんだけど、それとは違う暗さ、でも……すごく、あったかい。

「み、みみみみ…ミナキ、くん?!」
「ん? なんだ、マツバ?」

突然のことに頭がついて行かなくて混乱している僕を余所に、しれっとした態度で首を傾げるミナキくん。何で、君が、ここに? 口をぱくぱくさせながら言葉に出来ずにいる僕に、ミナキくんはニヤリと笑った。

「急にマツバに会いたくなってな」
「……なにそ、れ」

そんな理由で顔が火照る僕も僕だ。なんで今日に限って帰ってくるんだよ。どうしてこの場所が分かったんだよ。聞きたいことも話したいこともいっぱいあったけれど、とりあえずは夜空にいつの間にか姿を現したお月様にお礼をしておくことにしよう。





二十三夜の魔法
きっとカミサマが、聞き届けてくれたんだ




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11.01.17

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