【ある高校文芸部員女子のひとりごと】

うちのクラスには有名人が三人居る。
この高校に通う人だったらその三人は絶対に知ってるというくらいには有名だ。

一人は米屋陽介。
もう一人は出水公平。
そして、最後の一人がやまださあら。

この三人と私はたまたまこの高校入学した時から同じクラスで、だからそれなりにその三人と話すこともあったりする。
とはいえ、彼ら三人はクラスの中心で、私は大人しいグループだから仲がいいかというとまぁ、普通だ。

「おはよー」
「はよーす」

カラリと私の席のすぐ後ろの扉が開かれて入ってきたのは三人のうちの二人、やまださんと出水君だ。
幸運にも一番後ろの席をクジでゲットした私は、すぐ後ろから聞こえたあいさつに、少しだけ緊張しながら私もおはようと声をかけた。

「おはよう…!」
「立花さん、おはようー」
「よーす」

ニコニコしながらのさあらさん。あくびしながら横目でチラリと出水君。
2人はそのまま自分達の席に歩いていった。次々と教室中から2人におはようという声がかけられるのは、もう毎日のこと。二人の周りには自然と人が集まる。

そんな二人は極々自然に当然のように手を繋いでいるし、そのまま机に座った後もその距離はすごく近い。顔を寄せ合ってスマホを覗き込んでいる。
付き合ってもう三年かなーなんて話しているのを聞いたことがある。
二人はどちらもよく告白されたりするくらいモテるけど、お互いがお互いしか見えてない感じで告白はその場で即断わってしまう。そして、またすぐに二人で手を繋いで帰っていく。それは少女漫画の世界を見ているみたいで。うらやましいなぁ、なんて思ったりするのである。


【同じクラスの席が近い男子の話】

うちのクラスの有名人三人の話?
おーいいぜ。

うちのクラス有名人つーとやっぱ米屋と出水と、なんていってもやまださんな!
すげーかわいいから、男子の中では特に有名だぜ。去年、男子だけでひっそりやったミスコンで、トップ3に入ってたし。他のやつ?小佐野さんとか入ってたな、確か。あ、年上好きな奴らには国近さん人気だった。おっぱいでかいし。
でもさー、まぁ知ってるだろうけど、やまださんには近寄るべからずってのも有名な話な。だって、出水がすごいもん。やまださんのこと、なんていうの?溺愛?してるつーか。同じクラスだからって下の名前で呼んだだけでキレられるしな!

「ねぇ、陽介」
「出水ならトイレ」
「ん」

唯一クラスでやまださんのこと名前で呼んでんのが、米屋。確か三人はボーダーで一緒だから仲良いんだっけ。
つーか!やまださんがボーダーで結構強いんだよな?すげーよなぁ、全然見えねぇ。なんつーか儚い?っていうの?そんなんでいつも出水に守られてそうな感じなのに。

「おかえり、公平」
「おー。さあら、何してんの?」
「陽介の間違いだらけの宿題みてる」
「……米屋ほんとお前もっかい二年やる気じゃねーの」
「やんねーよ!」
「えっやらないの?」
「やらねぇって!」

あの三人はいつもあんな感じな。仲良いよなーほんと。
あーいうの見てると、ボーダーのすげえヤツらって感じしないつーかさ。

「なー加藤、数学得意だろ教えてやってよ」

あ、呼ばれた。わりーな。

「しょうがねぇなぁ、米屋。今度飯おごれよな」


【とあるボーダーC級新人隊員より】

初めてその人達を見たのは、個人ランク戦の訓練室にあるモニターだった。
そこにはたまに上級の人らが遊びだったり本気の模擬戦とかだったりで戦ってるのが映し出されることがある。今回もそれだった。

黒い長いコートをなびかせた二人は、目がチカチカするくらい沢山の光をぶつけあっていて、なんつーか本当に凄かった。
一人は画面の真ん中であんまり動いてない。それなのにその人の周りにはすげえ数のキューブが浮いていて、その周りをすごい速さで動き回るもう一人をそのキューブが追う。
そのキューブに追いかけられてるもう一人は紙一重でキューブから逃げながら手に持った武器で相手を攻撃してる。
それらは次々にぶつかりあって、画面が真っ白になるくらいだった。

「すげぇ……」

もうすげえしか言えなくて、真っ白になって見えない画面がもどかしい。何してんだろ、どうなってんだよ。もっと見たい、もっと。俺にもあんなことがしてみたい!

「なぁ、あれ誰?」

近くにいた自分と同じ服を着た奴に声をかける。

「え、あー。あれA級1位の人らだよ」
「A級1位?!」
「そう、ボーダーで1番強い人らな」

一番強い人ら。すげぇ。強くなるとあんなことが出来るのか。そう思うとワクワクしてきた。

それからしばらくして、ブースから出てきたあの黒いコートの二人に、俺は我慢できなくて突撃した。

「あの!俺、さっきの見てて!すげえなって!かっこよかったです!」
「お、おう?」
「俺まだ全然弱いけど、いつか強くなるんで、だから、あの、えっと……」
「うん」
「よろしくお願いします!」

後で落ち着いて考えると、この時の俺訳わからない事言ってる。でも、あの二人……出水さんとやまださんは笑ってくれて、頑張れよって言ってくれた。

そしてB級になったら模擬戦くらい相手してやると出水さんは言ってくれた。やまださんも実は一度は模擬戦ならいくらでもと言ってくれたけど……出水さんが「こいつはダメ」と止められてしまった。
後で聞いたら二人はボーダーでも有名な恋人同士で、やまださんと二人だけで模擬戦とかは二人の友達とかじゃないとなかなか出水さんのオッケーが出ないらしい。はぁーなんかすげぇ。ガキの俺にはそういうのってまだ分かんない世界だけど、でもあの二人はお似合いって奴だと思う。

「出水さん、俺、射手目指そうと思います」
「おっ、良いんじゃねーの」
「えぇ銃主じゃないの?!」
「あー、銃手もかっこいいと思うんですけど、出水さんの戦い方すげぇなって思ったから」
「お前、なかなか見る目あんじゃん」

楽しそうに、やまださんは少しだけ悔しそうに、結局三人でしっかり笑って。

それから俺はあの二人を目指して、訓練を続けている。いつかあの人らに追い付けるように。

誰かから見たあの二人


/ 表紙 /




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