「さあら」
「なーに」
「さあらー」
「なにー」
「さあら」
「だからなーにってば」
「こっち向け」

背中に感じる公平の熱。ついついほっとするから公平に背中を向けて寝てたらどうやらそれが気に入らなかったようで。
こっち向けとか言いながらグイグイと私の体を動かそうとしてる。

「押さないでー痛いー」
「いいからこっち向けって」

もーしょうがないなぁ。
ため息たっぷり吐き出しながら、公平の腕の中で体をくるりとひっくり返した。
そしたらそのまますぐにぎゅうと胸の中に押し付けられた。
だから、痛いってばー!

「どしたの?公平」
「なんでもねーけど」
「なんでもねーけど?」
「変な夢、見たんだよ」

ほお?
少しだけ身をよじらせればあいた隙間から見上げた公平の顔は、なんだかちょっとだけ泣きそうな顔だった。

「夢?」
「そー」
「どんな夢?」

そう聞きながら隙間から伸ばした手でようやく届いた公平の髪に触れればこそぐったいのか、顔が顰められて。私の手はあっという間に捕まえられてしまった。
私より少しだけ体温の低い手は、夏に近付いた6月の少しだけ暑い夜にすごく気持ちが良かった。

「いたっ」

掴まれた手は何を思ったのかいきなり公平の口元に運ばれ、躊躇なくがぶりと噛まれた。
もう!

「お前が、近界民に攫われて殺される夢」
「あー……」
「なぁ、さあら」
「うん?」
「死ぬなよ」
「うん」
「俺をおいてくな」
「公平もね」
「おー」

胸に擦り寄ったり、髪の毛や顔に触れたり触れられたり、そんなことをしていたら公平はだいぶいつもの調子に戻ったみたい。

「公平、あいしてる」
「さあら、あいしてる」

いつものように、言葉を交わして、あとは公平のしたいように。
あとはさあらは降り注ぐ愛を受け止めるだけ。

終わったらもう変な夢なんか見ないように2人向かい合って眠ろうと思います。
おやすみなさい。

ゆめくいばくのなまえは


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