七時前から見始めたが、九時半頃に、その映画は終わった。外は雨が降っている。
「雨、止まないか」
「止まないね」
「うーん、止んでたら君と外に出ようと思ったのだけど」
「寒いよ」
「嫌かあ?」
「いや、君が来いと言えば付いていくよ」
 そうだ、僕は一生、この人に付いていくという覚悟を決めているのだ。もし、雨の中、今から外に出ようと言われれば、必ず付いていく。
「ははは、行かないよ。雨の夜は危ないよ。家でひっそり時代を越すのがいい」
 彼女は食事の支度をしてくれたので、片付けは僕がやる。彼女はその間にお風呂に入った。 それから、僕はソファーに寝転がった。パズルの続きをする気分でもない。ただ、そこに横たわって、ぼーっとしていると、眠気に襲われる――
『トンッ』
「いたっ」
「うちを置いて、勝手に微睡むなよ」
「わわわ、ごめんなさい」
 仁王立ちで僕を見下ろす彼女。普通の女の子なら、こんな言い方、絶対にしないのだろうけど、そういうところも好きなのだから、仕方が無い。
 慌てて起き上がってみると、その腕には、何か大きいものを抱えていた。
「何それ」
「野球盤!」
 ソファーとテレビの間のローテーブルに、彼女が楽しそうに置いたものには、確かにそう書いていた。しかし、少々古そうな。
「去年の年末に発掘したのを忘れてたんだよ。良かったらやるかい?」
「やったことないけど……」
「教えるからさ」
「それなら」
 彼女にそんな趣味もあるとは。彼女の興味は、てっきり紙工作ばかりだと思っていたら、結婚して病気をちゃんと治して、仕事を仕切り直したら、やりたいことがどんどん出てきたと、彼女も言っていた。手芸とか、塗り絵とか、僕と同じ趣味のパズルとか。これもその一つなのだろうか。


[ 15/40 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -