甘いものの行く末に

「どうしても食いたいものがあるって言うから来たのにこれって…」
「んー?だって俺甘いのけっこう好きだし」
「俺は苦手なんだってば」

クリスマスについてきて欲しいという宗介からの強引なお願いで男二人でやって来たのは少し洒落ているレストラン。
当然周りにはカップルが多いわけで。

「なあ…俺ら絶対浮いてるって」
「そうか?制服じゃないし分かんないと思うぞ?」
「いやそこじゃなくて、男同士ってさ…」
「カップルに見えるかもなー!」
「違うから」

目の前で甘そうなチョコレートケーキを食べている宗介は周りにはお構い無しにニコニコしている。

(なんかこういうとこずるいよな…)

告白されてからの拓真は関係を保留にしてくれている宗介に感謝している。
変に気を使わせない宗介に拓真もずっと甘えてきたが、そろそろ2ヶ月を過ぎようとしていた。

コーヒーを傾けながら宗介を眺めていると、店内が暗くなった。
離れた席から声が聞こえてきた。

「お誕生日おめでとう!」

見ると男性が女性にプレゼントを渡しているのが見えた。

「今日あの人誕生日だったんだな」
「おー!すげー嬉しそうな顔してるなー」
「…宗介もすげー嬉しそうな顔してるけど」
「そりゃあ拓真と一緒だしな!」
「なんでそこで甘くすんだよ」
「えー好きだから?」
「あーーーーーもうだからやめろって!」

ケーキを食べ終えた宗介は拓真にニコニコしている。

「…あのさ」
「んー?」
「俺ってパッとしないし、性格ひねくれてるし、運動も全然だしでいまいちだと思うんだけどさ」
「うん」
「えっと…宗介は頭いいし運動出来るし、かっこいいしいいやつじゃん」
「え、俺のことかっこいいって思ってたんだ?」
「…うるさい調子乗んな」
「あはは、ごめんごめんそれで?」

笑っている宗介を軽く睨む

「…釣り合わないって」
「え?」
「だから、俺と宗介じゃ釣り合わないと思う」
「…拓真は俺のこと嫌いなのか?」
「嫌いじゃない好きだよ、宗介のこと」

ふと静かになった宗介を不思議に思い顔をあげると、

「え、なんでそんな顔赤いの」
「…いやだって俺のこと好きって初めて聞いた」
「あ…」

恥ずかしくなって俯く。

「好きならいいじゃんって…俺は思うけど拓真は駄目なの?」
「だって絶対可愛い女の子のがいいって」
「俺は拓真可愛いって思うよ」
「だから、そうじゃないってば!」

お互い真っ赤な顔で言い合っていると、ラストオーダーの時間を告げるウエイトレスにより一時休戦になった。



イルミネーションに彩られた駅への道を二人並んで歩く。

「人すごいな」
「なー、いつもこの時間だと全然いないのにな」

時計を見ると0時を回っていた。

「あ、母さんからだ、ごめんちょっと電話してくるから待ってて!」

宗介を待つ間クリスマスツリーでも眺めていようとベンチに腰かける。
すると近くから嬉しそうな男性の声が聞こえてきた。

「俺も会いたいからそっち行くね、え、海斗もういるの?」

なんとなく目で追うと男性は別の男性に手を降っている。
そして…

(え、キス…だよな)

突然の出来事に思わず顔を背けるが、心臓がうるさい。

(俺も宗介と…付き合ったらすることになるのかな。想像できない…)

ぼーっと考えていると、電話を終えた宗介が戻ってきた。

「ごめん、待たせた…って拓真どうした?」
「…宗介って俺とキス出来る?」
「え!?」
「あーわりいなんでもない」

そろそろ帰るかと腰を上げると腕を掴まれた。
振り替えると宗介が真剣な顔で見つめている。

「…出来るし、今だってしたい」

言葉を発する前に唇を塞がれた。
ゆっくり熱が伝わって離れていく。

「拓真好きだ、俺と付き合ってほしい」


仕返しにと唇を奪うと宗介の口からほんのり甘いチョコレートの味がした。

まだ少しの間だけ甘いものは苦手でいたい。

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