Long story
佰弐ーー生への光
もしも、自分に力があれば。
救えていた命だった。
秋生が良狐を救い。華蓮が亞希を救い。
李月が八都達を救ったように。
自分に力がありさえすれば、救えていた。
出会ってから、ほんの僅かな時間だった。
それほど沢山のことを話したわけでもないし、沢山の時を共に過ごしたわけでもない。
けれど、家族のように思っていた。秋生や、琉生や、両親と変わらない程に近くに思っていた。
自分の一方的な感情だったかもしれないけれど、それでもどこか、姉のように慕っていた。大好きだった。
きっと、自分よりも助けたかった人は沢山いる。その人たちならもしかしたら、助けられたかもしれない。
それなのに、その場にいたのは自分だった。
そして、自分には力がなかった。
助けられなかった。
ただ見ているだけで、何も出来ず。
無力だった。
本当に、いつもいつも。
いつもいつもいつも、無力だ。
たったひとり。
たったひとりでいいのに。
それすらも、助けられない。
誰も、助けられない。
いつだって、誰も助けられない。
この先もずっと。
ずっと、助けられないのか。
どれだけ努力しても、どんなに願っても。
そんなのは、もう嫌だ。
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mokuji
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