Long story


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 幸い、第3体育館はどこのクラスも使っていないようだった。
 加奈子も人がいるところでは隠れにくいのかもしれない。
 第3体育館まで行くと、秋生はもちろん、華蓮でもその気配を感じることができた。さすがに、幽霊になったことを自覚しても、すぐにその気配を制御することはできないらしい。
 2人は第3体育館に入り、加奈子の気配が強くなるほうに進んでいく。

「トイレ好きだなぁ」

 秋生がそう言いながら進んでいく先は、体育館の奥にあるトイレだ。
 加奈子の気配はそこから漏れていた。

「もしかしたら、トイレで死んだのかもな」
「え、ガチのトイレの加奈子さんっすか」
「確証はないが。死んだ場所、あるいは似たような場所に無意識のうちに引かれているということもあるだろう」
「へぇ…」

 華蓮の言葉に感心しながら、秋生はトイレに入る。
 先ほど同様、一番奥の扉の前に立つ。本当に、死んだ場所に関係あるのかもしれない。
 秋生はそう思いながら、思い切り息を吸った。


「かーなこちゃーん、あっそびっましょ!!」


 バンッと、勢いよく扉を開く。
 デジャヴだ。わざわざそれをする必要性がどこにあるのか。もう少し静かにできないのかと華蓮は表情を歪めた。


「わ!…はやぁーい!何で、こんなに早いの!」
「ふっふっふっ!俺たちをなめてもらっては困るな!」

 秋生はもう完全に楽しんでしまっている。
 ノリにノッていることは、誰がみても明らかだ。

「むぅー!もう、1回!」
「何度でも挑戦するがいいさ!」
「おい待て、何でそうな…」

 何でそうなる。と華蓮が言いかけた途中で、加奈子はフッと再び姿を消した。


「あ」

 ちょっと調子に乗り過ぎたかな、と思い華蓮に視線を寄越す。
 ネッグウォーマーで目しか見えないが、オーラで怒っているのが分かる。

「秋生」
「…テヘペロ」

 ギロっと睨んでくる視線に対して、茶目っ気を出して舌を出してみる。
 すると、華蓮の手にバッドが握られた。

「わー!ごめんなさい、ごめんなさい!もう調子に乗りません!」

 華蓮がバッドを手にした瞬間、秋生は慌てて頭を下げた。
 本気でないにしても、華蓮を怒らせて得をすることはない。

「さっさと場所を突き止めろ」
「はい。…えっと……生物室っすね」

 今度はトイレではない。さすがに学習したらしい。
 秋生は再び走り出す。華蓮もその後を追った。
 秋生はできれば2限目の授業には間に合いたいと思っていたが、華蓮もきっと同じだろう。


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