Long story
佰伍━━━夢の中へ
端から見れば、みすぼらしい岩に小汚ない紙屑が付いてるようだ。その横を通り過ぎたとしても、誰も気にすることはない。否、誰にも気にされないように、気付かれないように……そんな空気に囲まれて、ひっそりと佇んでいる。
しかし、見ようとすればそれは確かにそこにある。
否、本来は見ようとしても見ることは出来ないだろう。しかし今…数多の脅威により、絶妙であった波長が崩された今ならば。
しわがれた手が、その紙屑に手を伸ばす。十数年の間、誰の目にも触れないように佇んでいたその岩は、その視界の中にしっかりと写っていた。
それがただのみすぼらしい岩ではないことも、小汚ない紙屑ではないことも知っていた。それでいて、しわがれた手はその手を引くことはなかった。むしろ、だからこそ手を伸ばしたのだ。
ベリッと、段ボールのガムテープを剥がすような音がした。
しわがれた顔がニヤリと笑う。
「……随分と老け込みましたなぁ、旦那」
それは紛れもなく、悪意だった。
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mokuji
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