Long story


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 やって来たのは家だった。
 いつもは華蓮か李月、そして秋生に桜生…それから時々春人もだが。その辺りの面々しか顔を出さないこの場所だが、今日はいつにも増して人口密度が高い。
 妖怪達は一斉にやってきた面々に驚きつつ、何かを察したのだろう。金木犀の木からその様子を覗くだけで、華蓮が部屋の畳を剥ぐっても特に何か口出しをすることはなかった。

「ああ、そうか」
「…何か分かったの?」

 華蓮が床下の収納を見つけた頃、李月が何か思い出したように呟いた。桜生が問いかけると、李月は深月の方に視線を向ける。

「さっき、深月が言ってた母さんの台詞が一言一句間違ってないなら…」
「間違ってねぇよ」
「……あの人たちは新聞を作ることに全青春を注いでいた…あの人たちってことは、あれは父さんだけに向けられた言葉じゃない」

 桜生が手にしたまま持ってきた新聞の冊子、そこに記されてあるイニシャル。李月はそれを指差した。
 R.N。夏川蓮。新聞を作ることに青春を注いでいた、もう1人の人物。

「夏川先輩の、お父さん…?」

 この間の、鈴々と蓮の会話を思い出した。
 床下に作ったウイスキーの隠し場所が、睡華にバレて物置になった。そして、古い物を収納するのには丁度よかった、とも。
 屋根裏の話もしていたからその可能性もあったが、深月の母の足元を見たのか…という言葉から華蓮は床下で間違いないだろうと踏んだ。

「……正に、灯台もと暗しだな」

 李月が話している間にも次々に酒を放り出していた華蓮の手が止まる。華蓮が床下を漁り始めて1分も経っていないが…顔を出すと、いつの間にか、部屋中が酒瓶で溢れ返っていた。
 華蓮は空いたスペースに、一番奥の方で見つけたプラスチックケースを放り投げた。かなりの重たさのケースには、どうやら大量の紙が入っているようだった。

 第11号〜第20号
・旧校舎の図書室
・連続生徒記憶喪失事件
・校舎を走り回る子供の霊
・理科室爆発の真相
・その他

 ケースの上には項目が書かれているようだが、その文字から察するにこのケースには華蓮たちの探しているものはなさそうだった。
 しかし、プラスチックケースはそれひとつではない。華蓮は床下にあるケースを次々に手に取り、空いているスペースに投げ入れていく。

 第31号〜第40号
・芸能人の不倫報道先取り
・堕落生徒会長の偽物あらわる
・野球部襲撃の真犯人
・その他

 第41号〜第50号
・巨大蟻の行列
・人面犬の目撃情報多数
・最近妖怪が騒がしい
・その他

 第111号〜第120号
・体育倉庫の頭蓋骨
・壁から延び伝う階段
・屋上から飛び降り続ける生徒
・その他

 いよいよスペースがなくなると、李月がそれを確保するために酒を外に放り投げ始めた。亞希と八都が悲鳴にも似た声をあげながら、投げられる酒を必死に受け止めている。
 当たり前だが、華蓮はそんなことどうでもいいというようにひたすら床下からケースを放り投げた。他の面々は、思い思いにケースを開けて中を探り始めていた。

「あった」

 特集
・大鳥高校七不思議
 勝手に開けたら呪い殺す

 他のプラスチックケースにはいくつもの項目があったが、このケースにはたったひとつの項目しか記されていない。そして、注意書のようなものがるのも…これひとつだ。
 華蓮は何となく嫌な予感を察して、これだけは放り投げず丁寧に運び出した。その行動は正解だったようで、秋生がこのケースを見た瞬間に目を見開いた。

「うわっ、それ開けちゃダメです!こんなの食らったら、いくら先輩でも1週間は起き上がれませんよ!?」

 ざざっと全員が後ずさった。
 そんな中、秋生だけは覗き込むようにしてケースを見ていた。その顔は、秋生にしては珍しくとても険しいものだ。

「どうにか出来るか?」
「どうですかね…仮に出来ても、かなり時間がかかると思います。荒療治でどうこうなるもんじゃないです」
「無理なら無理でいい」
「…やるだけやってみます」

 秋生は華蓮に答えて、そのケースを部屋の隅に押しやった。これは多分、今日の今日でどうこうなる問題ではないだろう。

「…それで全部だったのか?」
「いや…まだ、ある。一応、出してみるか」

 それはこれまでのプラスチックケースよりいも小さいものだった。中には、DVDのようなものが沢山入っている。
 華蓮はそれを取り出して、剥がした床下を元に戻し…それから畳を元に戻した。改めて辺りを見回して、たった数分の間に随分と散らかったものだ…と思う。いつも秋生と桜生が綺麗に使っている部屋が、まるで盗人にでも入られたのかという程にの汚さになってしまっていた。




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