Long story


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 休み時間はいつも春人と会話をするのだが、今日はあまり会話がはずまない。一応話しているけれど、どちらも何だか上の空といった感じだ。原因は分かっている。今日の朝、兄弟の話をしたことが原因だろう。
 どうしたら春人が機嫌を直してくれるだろうかと考えていると、突然ガラッと勢いよく教室の後ろ側の扉が開かれた。視線を向けると、この学校には不釣合いな、しかし既に見慣れた女子生徒の制服に身をまとった世月が立っていた。


「春君…!!」
「よよよ世月先輩…!?」


 世月は春人を見つけるや否やなにふり構わず駆け寄ってきて、そのまま世月に抱き付いた。教室がざわつく。

「横暴教師にいじめられた可哀想な私を慰めて…!」
「えっ…ええっ?」

 春人は訳がわからないと言った様子であたふたとしている。
 その間も教室の視線は集中していて、近くにいるだけの秋生もどうしていいか困る。

「何が…って、世月先輩泣いてる…!?」
「泣いてなんかないわ…ちょっと目にゴミが入っただけよ!」

 そう言って顔を上げた世月の目は腫れ上がっていた。おまけに涙が伝った跡が頬に残っているし、それで泣いていないというのには少々厳し過ぎる。

「秋君、ちょっと春君借りていくわね」
「えっ」
「はい……」

 突然話を振られた秋生は、この状態で否定することもできず頷く。
 秋生の許可を得た世月は「ありがとう」と言いニコリと笑うと、春人の腕を引き立ち合があらせる。

「行くわよ春君。愛の逃避行」
「意味わかんないんですけど……」

 最後まで教室中の視線を浴びながら2人は出て行った。
 余韻に包まれているかのようにしいんと静まり返った教室に、再びガラッと扉の開く音がした。今度は前の扉に、秋生の顔を顰めさせる人物が立っていた。琉生だ。


「秋生、来い」
「はっ!?…ちょ、離せよ!!」

 つい先ほど世月が春人にやったように、秋生もやってきた琉生に腕を捕まれて立ち上がらせられる。しかし、春人のように素直に付いて行く秋生ではない。

「嫌だって言っても無理矢理連れてく。学校の中で俺に抱えられたいのか?」

 そんなのは絶対に嫌だ。
 凄まれた秋生は、意味が分からないままに琉生の後に付いて行くことにした。



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