Long story


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 華蓮のおかげでずっと悩み続けてきたことの答えを自分で出すことができた。
 しかし、桜生にはまだ分からないことがある。

「…夏川先輩…でも……これが分かって…どうしたらいいんでしょうか?」

 桜生の心臓の異変の正体は分かった。それは桜生が李月に恋愛感情を抱いているからだ。
 しかし、それが分かったとして。桜生は一体どうすればいいのだろう。

「お前はどうしたいんだよ?」
「僕は……」

 もともとは、李月に近寄ることで破裂しそうになる心臓をどうにかしたいと思っていた。しかし、原因が李月のことが好きすぎるからというなら、それはもうどうしようもない。李月のことを好きでなくなるなんて御免だし、そんなことはできない。

「今話した中で、いくつか答えが出てただろう」
「いくつか……」

 そうだ。桜生はいくつか答えを出した。
 李月に膝枕をしてほしくて、したくて。そのために誰よりも自分のことを好きになって欲しくて、お互いが一番好き同士になりたくて、そして。

「……恋人同士になりたい」

 それが桜生の出した答えだった。
 自分が李月のことをどう思っていて、李月にどう思って欲しいか考えた末の結論だ。

「じゃあ、そうなるためにすることくらい知ってるだろ?」

 華蓮が何を言おうとしているのか、桜生は察することが出来た。
 どうすれば恋人同士になれるのか。桜生が知っているその方法はひとつしかない。そして多分、華蓮も同じことを思っているに違いない。

「で…でも……もし、いつくんが僕のこと好きじゃなかったら……」
「そんなこと言ってたら、一生恋人同士になんてなれないな」
「…告白にリスクはつきもの?」
「よく分かってるな。…だがまぁ、お前の場合リスクなんてないに等しいだろ」
「え…」

 それはどういう意味だろう。
 そう聞こうとした瞬間に、桜生の言葉を遮るようにガラリと扉が開いた。


「ここにいたのか、桜生」
「い…いつくん……」

 開いた扉の向こうに、李月が立っている。
 噂をすれば影とは、実にうまいことを言ったものだ。最初に言い出した人物は本当に天才だと思う。

「お前が来たなら出て行くのは俺だな」

 華蓮はそう言うと、ゲームを手にして立ち上がった。
 桜生と李月だけにして、桜生に告白しろと促しているのだ。見上げると、華蓮が視線を落として桜生の頭に手を乗せた。

「頑張れよ」

 頭に乗せられた手はすぐに離れ、そして華蓮は入口の方に向かって行った。その先にいる李月は、怪訝そうな表情を浮かべている。やがて、華蓮と李月が平行線上に並んだ。

「この付けはいずれ払ってもらうからな」
「はぁ?」

 すれ違いざまに言われた言葉に、李月は何の話だか全く分からないと言ったように声を出した。しかし華蓮はお構いなしに、そのまま足を進めた。

「夏川先輩!」

 すでに李月の背後まで進んでいた華蓮が、桜生の方を振り返る。

「僕、夏川先輩のことも大好きだから、これはきっと先輩愛ですね!」

 今、華蓮にその気持ちを伝えておくべきだと思った。先輩愛なんて言葉があるのか分からないが、桜生にはこの気持ちの表現の仕方がこれしか思いつかなかった。
 華蓮は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに桜生に笑って見せた。

「そうだな」

 そう言って、華蓮は部室を後にした。
 状況の呑みこめていないらしい李月が思いきり顔を顰めていたが、桜生は満足だった。
 しかし、華蓮に自分の気持ちを伝えて満足している場合ではない。
 本当に気持ちを伝えるべき人は華蓮ではないのだから。

「いつくん」
「何だ?」
「今から重大発表をするから、心して聞いてね」

 そう切り出しながら、桜生はソファから立ち上がって今自分の気持ちを伝えるべき相手の方に歩み寄った。怪訝そうな表情を浮かべている李月のすぐ目の前まで行き、伝えるべきことを頭の中で整理する。
 それから意を決して口を開くまで、それほど時間はかからなかった。



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