Long story


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 リビングに華蓮と秋生以外の人物が増えたのはもう少しで正午を回ろうかという時間帯だった。扉が開く音がした秋生は慌てて起き上がろうとしたが、入ってきた人物が李月であることを確認すると、起こそうとした体を元に戻した。李月には以前にも逆バージョンを見られているので、今さら何を隠すこともない。多少恥ずかしいが、それよりも今のこの最高の気分をもう少し味わっていたいという方が大きかった。李月がリビングの扉を開けるとほぼ同時くらいに、入口付近に桜生が姿を現した。まるで李月が起きてきたのを見計らったかのような、ナイスタイミングだ。

「……邪魔?」

 桜生が苦笑いを浮かべて呟く。これは、秋生か華蓮に問うているのだろうか。

「聞かずに出られないのか、お前は」

 既に扉を閉めようとしている李月が呆れたような声を出した。多分、顔を顰めているに違いない。

「確かに、それもそうだ」

 名案だと言わんばかりに手槌を打った桜生は、微かに開いている扉の隙間に滑り込もうとする。今更気付いても、もう遅いと思うが。

「入ってくればいいだろ、別に」

 扉が閉まる寸前で華蓮が声を出した。秋生もその意見に賛成だ。
 この前の睡蓮みたいにタイミング悪く入ってくるならともかく、今はただテレビを見ているだけだ。例えば深月とか侑とかならこの状況を見られて時点で面倒臭くなるだろうその後が想像できるが、李月と桜生がいることに何ら支障はない。

「これはあれだね。ムード壊しちゃったから、もういいよって感じだよ」
「お前がな」
「僕が華麗にムードを壊したから、いつくんは寝起きのコーヒーが飲めるね」
「開き直るな」

 まるで先ほどの華蓮と秋生のやりとりのような会話をしながら、一度出て行こうとした李月と桜生がリビングに足を踏み入れた。そしてそのままダイニングに向かう。それから李月は何やらガチャガチャと音を立てて作業を始めたが、桜生はテレビの近くまでやってきた。気を遣っているのか、秋生たちと若干距離を離している。

「…カップルのデート番組?」

 テレビ画面に視線を向けながら、桜生が顔を顰める。

「そう」
「何でこんなどうしようもないもの見ているの…?」
「他に見るものがないから」

 さきほど華蓮に説明したのと同じように、桜生にも他の番組について説明すると、桜生は納得したように「なるほど」と短く呟き、李月のいる方に移動して行った。



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