Long story


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 秋生がそんなことを考えている間もコメンテーターはまだ恥を晒している。華蓮との会話も途切れてしまったので、またしばらくそのコメンテーターの話を聞くことにした。いつの間にか話が温暖化の話から県の管理問題の話に切り替わっている。

『大鳥高校はまだ授業再開のめども立っていないとか。これも全て、県の体制が悪いからです』

 何を腑抜けたことを言っているのやら。授業が再開できないのではない。再開しないのだ。大鳥財閥の権力があればその辺のホテルでも貸し切って授業をするのは簡単だろう。それをしないのは大鳥高校が名義上は県立高校だからだ。普通の県立高校はホテルを貸し切って授業再開することはない。大鳥高校は実際のところ大鳥財閥が支配しているに等しい。そして普段のちょっとしたことなら大鳥財閥の力を使っても簡単にもみ消せる。しかし、さすがにホテルを貸し切っての授業まではもみ消すことができない。さらに、大鳥財閥の上層部はプライドだけは一流だから、他の公立高校や私立高校に頭を下げて間借りをする気はさらさらないらしい。だからあえて授業を再開しないのだと双月が言っていた。

「学校が元通りになるまでどれくらいかかると思います?」
「最低でも後1週間は無理だな。霊たちが落ち着かない」
「1週間……」

 こんな日が後1週間も続くのか。それも最低ということは、まだ伸びる可能性があるということだ。もうそろそろアレンジするスイーツもなくなってきたというのに、先が思いやられる。

「そんなに学校に行きたいのか」
「そりゃ、こんな馬鹿みたいなコメンテーター相手に喋るよりは、ひっきりなしに先輩に叱られながらでも学校で悪霊退治してる方がいいに決まってるじゃないですか」
「ひっきりなしに叱られている自覚があるなら直せ」
「前は直そうって思ってましたけど、最近気づきました。俺のこれは性分だから、直すのは不可能です」

 これに気が付いたのは、華蓮と行動する傍らで李月とも行動するようになったからだ。秋生は李月と行動しているときでも、華蓮といる時と変わりないくらいに叱られる。華蓮に言われたことがあるようなことを、まるでデジャヴのように言われるのだ。だから気が付いた。秋生は何をどう変えようと動いても、叱られることを回避できない性質なのだと。

「開き直るな」
「そうでもしないと、やってらんないですよ」

 そう言って秋生はブルーベリー味のシュークリームに手をつけた。不味いわけではないが、少しブルーベリーの味が強すぎたかもしれない。甘さより酸味が勝ってしまっている。後から酸味がきいて来たので思わず目を閉じ、酸味が去るのを待った。訂正しなければいけない。ブルーベリーは完全に失敗作だった。


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