Long story
ガンッと、再び金属同士のぶつかる音がする。
まるで――まるで、アニメの戦闘シーンでも見ているようだと秋生は思った。
「何故邪魔をした」
華蓮が一方的にバットを振り下ろすのに対して、さきほど華蓮から「李月」と呼ばれた人物はそれを受け流すだけで反撃をしようとしない。
「守るものがあるからだ」
そう口を開いたところで、李月は初めて華蓮に反撃する。華蓮の振り下ろしたバットを受け流すと、手にしている日本刀を華蓮のわき腹めがけて振った。
「意味が分かるように説明しろ!」
華蓮は李月からの反撃をかわし、今度は足めがけてバットを振った。
「お前に―――桜生は消させない!」
「な――――…」
肉の刻まれる音がした。李月の言葉に驚いた華蓮が反撃をよけきれず、日本刀が思いきり左腕に刺さっていた。
「ッ…!!」
華蓮は一瞬ひるむが、日本刀が刺さった腕をそのままにバットを右手だけで握り、李月の頭めがけて振りかざす。人が物で殴られる音というのは、思いのほか低く、そして鈍い音だった。
李月がふらついたと同時に華蓮から日本刀が抜け、そのまま2人ともお互いから距離を取るように何か後退りをした。
「痛ぇな……」
李月は頭を振り、華蓮を睨み付ける。頭から大量に出血しているのが見える。
「こっちの台詞だ…」
そう呟く華蓮の腕からも、おびただしい量の血が流れている。
どちらも、放っておいたら出血多量で死んでしまいそうだ。
止めなければ。秋生はそう思ったが、しかし体は全く動こうとしてくれなかった。
「どうしてお前があいつを庇う!?」
「守りたいものがあると言っただろ!もしお前が桜生を消すというのなら、俺はお前と刺し違えてでも桜生を守る!!」
今日、何度目かの突風が吹く。春人と秋生は思わず目を瞑る。
次に目を開いた時には、カレンにまとわりついていたようなものと似た、しかし少し違う黒いものが李月の周りを漂っていた。
そして瞬時に、李月が華蓮に距離を詰めた。
「――――ッ!!」
ギインッと、金属音が響いた。
いつの間にか、華蓮の周りにも一度消えた赤黒いものがまとわりついている。
そして再び、2人の間に距離が空いた。
「本気で言っているのか?」
「嘘を吐く理由などない」
次の瞬間、まるで台風の中に放り込まれたような、飛ばされてしまいそうな突風が屋上に吹き荒れる。同時に、カレンがいた時とは違う空気に、秋生もそして春人も全身の身の毛がよだつのを感じた。
華蓮の持っていた金属バットはどす黒い赤に染まっているし、李月の持っていた日本刀は真っ黒に染まっている。秋生と春人には、SFアニメと言われてももう付いて行けない状況になっていた。
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mokuji
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