君にとっての僕の価値 | ナノ



※来神時代





放課後。夕焼けが教室を映し、オレンジ色に染める夕方。
ある教室を覗くと、そのには二つの人影があった。

そこにはブレザーに身を包んだ女性徒はカタカタと肩を震わせ、学ランを着た男子生徒と向かい合っていた。

「ねえ、泣いたってダメだよ」

男子生徒――折原臨也は目尻に涙を必死に溜める女性徒に淡々と言い放った。
細まる臨也の赤い目に射ぬかれた女性徒はビクリと肩を揺らす。
ゆっくりと臨也の口は弧を描き、そして消えた。

「泣きたいのはシズちゃんの方だよ。シズちゃんは人に優しくされるのが怖い。また壊してしまうんじゃないかって。いつもいつもシズちゃんは悩んでるんだよ?それなのに君は、そんな事はつゆしらずシズちゃんに気安く話しかけては微笑んで。シズちゃんを誘惑するのはやめてくれる?そんな気無いなら尚更、……シズちゃんに話しかけんな」


臨也はつらつらと、女性徒に語りかけ、最後には明らかな否定をみせた。
女性徒は声を引きつらせならが「ごめんなさい、ごめんなさい」と途切れ途切れに呟き、臨也は満足したように俯く女性徒の顔を覗き込んだ。


「わかったならいいんだよ?」

赤い瞳が、笑った。



***


結局泣き出した女性徒を教室に残し、臨也は目的の人を探し始めた。
キョロキョロと辺りを見回し、昇降口前まで来ると目的の人――平和島静雄は自分の下駄箱から丁度外靴を出して下校する所のようだった。

臨也が少し離れた所からシズちゃん、と呼ぶと静雄はこちらに気付きなんだよ、と返す。

「俺、シズちゃんの事、すき。すき。大好き」

臨也は真剣な顔で愛の言葉を並べ立て始めた。

「今日、お昼にシズちゃんってば女の子と仲良くお喋りしてたよね。シズちゃんを取られちゃうかと思った。……嫌だ。そんなの俺、ヤだよ、シズちゃんは俺のものでしょ?俺はシズちゃんのものでしょ?」

ねえ、違うの?の今にも泣きそうな声で臨也は訴えた。

ズボンをぎゅっと握りしめ、俯く臨也を見、静雄は開けた下駄箱をゆっくりと閉めた。

「シズちゃん嫌いにならないで…!俺、どうすればいい?どうしたら、俺の事、もっと好きになってくれる?」

なおも俯きながら訴える臨也に、静雄は内心ため息をついた。
どうしてこんなにも歪んでしまったのか。



それは、付き合い始めて、すぐの事だった。

静雄がある女性徒に呼び出しをされた時のこと。
内容は、予想通り告白だった。
静雄は丁寧に相手を傷つけないよう、慎重に断った。はずだった。

だがその告白をしてきた彼女は次の日から、学校に姿を見せなくなった。

『だって、彼女、本当にシズちゃんが好きで告白したんじゃないんだもん。そんなのシズちゃんに失礼だよ。だから……』

だから、少し忠告してあげたんだよ。
そう言って無邪気に笑う臨也を見て、静雄は何も言う事ができなかった。
臨也が普通に“忠告”で終わるはずがない。
だが静雄は怒る事もなく、臨也の髪をそっと撫でるだけだった。

『俺は、悪くないよね?シズちゃん』




突き放す事ができないのは、なんでだろうか。
ふざけるな、と一喝すれば臨也はしている過ちに気づくかもしれないのに。
そこまで静雄は理解しているが、肝心の言葉は決して紡がれない。

「俺は、手前だけが好きだ」

そう言ってやると、臨也はぱあっと表情を変え溢れんばかりの笑顔を見せた。
一緒に帰ろ!、と臨也は笑って静雄の手をとる。

「シズちゃんは、俺のものだよね!」




君にとってのの価値




それは“依存”という歪みだと気づいているのに。
何も言わない俺も、きっと、歪んでいるのだ。




(20100603)

悠さま52525打キリリク!
「切なめの話でメンタル弱くて静雄に依存しまくってる病んでる臨也」のお話でした!

と言いますか、病んでるかつ依存している静臨になってしまいましたァアア!!!!!!
なんてこった!どうしてこうなった!!!!
勝手に来神時代にしてしまいました…すみません…!私の趣味です…!!

全力でリテイクは受け付けておりますので、なんなりと……!!
この度はキリリクありがとうございました!

またのお越しをお待ちしております^^


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