短編小説ログ | ナノ





あーうん。どうしよう。好きだ。もう凄く好き。

徐々に徐々に夏に近づいてきて、直射日光が無いくせに無駄に蒸し暑い。そろそろ夏用コートにしようかなあ、なんてぼんやりと考えながら池袋のまちを歩いていると、ふとシズちゃんが凄ーく恋しくなった。
なんでかなんて知らない。知りたくもない。つか恋しくなった辺りから認めたくない。

でもやっぱり俺はシズちゃんが好きで、かなりシズちゃんが好きな訳だ。
なんか突然、腹の底からじわじわーと好きだー!って感情が湧き出てきて、なんだろ、そう、叫び出したい感じ!

うんうん、きっと暑いから頭をやられたんだ。ついに沸いたか俺の頭。

どれもこれもシズちゃんのせいだね、わかるよ。
なんとなくイラッとしたので、歩道橋から下を通る電車に向かって叫ぼうか。何をって……愛?
すぅ、と息を吸うとなんとなく肺に入った空気が生ぬるい感じがしてまた気分が悪くなる。
大声を出すのは苦手、というか珍しい俺だけど、この暑さの苛立ちをぶつけるのにはうってつけな気がする。つか吐き出したいんだよね、このじわじわとくる感情を。

「好きだああああシズちゃぁああぁあんんん!!!」

同時にガタンゴトンと電車が下を通過して、俺の大声をかなり掻き消した。ちぇ、つまんないの。
でもなんとなく満足したので、暑いのも限界。新宿に帰ろうかと足を向けた時、目の前すれすれに突如道路標識が現れた。
さあ、ここはどこだか覚えてる?下は電車が通る、歩道橋のど真ん中。
なのに何で徐行運転の標識が目の前にあるの?なんて今からすぎて疑問にさえ感じない。
あらあら。

「手前ッ!大声で恥ずかしいこと抜かしてんじゃねえよ!!」

振り向くと、予想を裏切らず俺の大好きな(笑)シズちゃんがそこに居て。さすがノミ蟲レーダー完備。見つけるの早いなあ。
ずんずんと大股で歩いてきては目の前で止まる。身長差的に見下ろされる、それが俺は嫌い。むかつくよねー。

「いやあ、何となくすっげえ叫びたくなってさ。叫ぶならやっぱ愛かなって」
「だったらお得意の人ラブだとなんだの言えば良かっただろうがよ!」
「いやま、そうなんだけどさ……なんとなく?好きなんだもん」
「…………何が」
「シズちゃんが」

おお。あからさまに嫌そうな顔をした!
表情を変えずに真顔で好きだと言っただけなのにねえ。その反応はヒドイと思うんだけど。一応、恋人だよ?俺。ま、一応とか言っちゃう辺りからもう駄目な気がしなくもないけど。

ふむ。なんだかシズちゃんはケンカをする気は無いようで。視線を反らして舌打ちを残すシズちゃんに少し傷つきながら、また俺は息を吸った。やっぱり空気が不味い。ぐっと手すりを握って少し体重を乗せて身を乗り出す。空に叫んだ。

「シズちゃんッ!愛して、むがっ」
「うるっせえッ!いちいち叫ぶなッ!!!」

愛してる!
嫌がらせのように隣でまた叫んでやろうとしたら全力で口を塞がれた。むーむー喚こうが一向に手をどけてくれない。一体何さ。

「……んーっ!」
「わかったから黙れ臨也……!!」

何がわかったんだか。
口を塞ぐ手をぽんぽんと叩いて退けるように促すと、なぜかシズちゃんはぎゅっと後ろから抱き締めてきた。え?なになに?

「―――……」


耳許でシズちゃんがぼそりと囁いて、またガタンゴトンと電車が通る轟音が響いた。

暑い……

湿度のせいの暑さか、シズちゃんの体温の暑さか、はたまた一気に急上昇した自分の体温の暑さか。暑い。

顔が、熱い、ばか。



腹の底からじわじわとくる感覚に、俺は何も言えなくなった。




僕を、呼んで



(20100627)


ただ「好きだああああシズちゃぁああぁあんんん!!!」という私の心を代弁して欲しかっただけです。
……すみませんでしたァアア

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