3.




「ほんじゃ、コレで寮の説明は全部済んだからね。
で、これが一応書類だよ」
と、大家さんは言い、俺に書類を渡した。

「なぁー!白石!もうここにすんねやろ!!?ワイと、千歳と、一緒に住もーやー!!!
ワイらだけやのうて、おもろいやつ、いーっぱいおるんやで、ここ!」
「金ちゃん、無理強いするんばいかんたい。白石が自分で決めんとね」
「そうよ白石クン!ここにしなさいよ!おばちゃん、白石くんが住んでくれたら、
もうあーんなことやこーんなこと、いろいろサービスしちゃうから!」
「せやなぁ……うん、確かに、立地条件も悪ないし、かなり古いんだけが気がかりやけど…。
……わかった。ここにするわ、おばちゃん。この紙に書いたらえぇのん?」


「ようこそ白石。君ならそう言ってくれると思っていたよ」
ひとりの声に俺はただ吃驚するしかなかった。
ゆ…幸村……どっから出てきてんな自分!


















































背面歩行
 03 はじめましてのごあいさつ




























「…久しぶりだね白石。俺が一応、ここの責任者ってことになってるんだよ」
幸村は吃驚する俺をよそに話し始めた。

「お、おぉ…そうなんや」
「で、この大家さんは、俺らが学校に行ってる間、家事をこなしてくれてるんだ」
「白石クンが来てくれてほんっっっっとうにおばちゃん嬉しいわぁ!今日はパーティーね!うふふ!!!!
ご飯の用意しなくっちゃだわ!!!」

やたらはしゃいでる大家さんはそう言ってどこかへ消えてった。
若干引き気味の俺を察したのか、千歳が「白石、大変なんはこれからばい」と小声で言った。
ほんま、どないなることやら、俺…。


「このボロ荘に住んでいるのは俺と千歳と遠山以外にあと4人いるんだ。
残りはそろそろ帰ってきはじめる頃だと思うけど…」
と幸村が話していると、


「…ただいまっス」
と玄関から声がした。

「越前。おかえり。どこか行ってたのか?」
「コンビニ行ってた。で…」
越前と言われた奴は、俺のほうをじっと見ている。


「白石、白石蔵ノ介や。今日からよろしゅう頼んます」
「どーも。越前リョーマっス。よろしく…ってことはここに住むんだ?」
「あぁ。もう決めさせてもろてん」
「ふーん。ま、よろしく」

越前クンはそれだけ言うと、階段を登って行った。
なんちゅーか、クールな子やなぁ…財前思い出したわ。

って感慨にふけってたらさっきまでギャーギャーうるさかった金ちゃんが
「コシマエー!勝負やー!勝負ー!!」
と越前クンの後を追っかけていった。
ってかコシマエて…相変わらず金ちゃんには驚かされるわ…色々と…。







さらにガチャっと玄関のドアが開いた。

「あー!疲れた疲れた!ただいまー!なんか食いモンねー!!?」
「うらぁ切原!てめぇ最後に入ってきたんだから鍵閉めやがれ、鍵!」
「あー、もう面倒なんで宍戸サン頼んだっス!」

えらいもじゃもじゃした髪の毛の子(こっちが切原クン、やろな)と、
宍戸て呼ばれたキャップ帽を被った人がドタバタと居間へやってきた。

「赤也、最後に入ってきたんならちゃんと鍵閉めてくるんだね」
「なんだよるせー「…へぇ、うるさい?誰が?「ゆゆゆゆゆ幸村部長!じじじ冗談!冗談っスよ!
鍵!俺、鍵閉めてくるっス!!!」

切原クンが血相を変えてまた玄関へ走っていった。
で、速攻で「閉めてきたっスよ!鍵!」と冷や汗混じりに言った。
幸村…自分…軽くホラーやで。切原クンのあの驚きよう見てみいや。
宍戸クンは何かもう、いろいろ悟ってるような顔付きや。





「……フフ、あぁ、赤也に宍戸。聞いてくれ。
この人が今日からここに住むことになった、白石だ」
幸村は何事もなかったように俺のことを紹介した。
…切原クンはまだ青ざめてるけどな。ご愁傷様やわ、切原クン。


「永観高3年、宍戸亮だ。よろしくな。そういやよ、お前も永観高らしいな」
宍戸クンはそう言うと手を差し出してきた。なんかめっちゃ爽やかな人やわ。えぇ感じや。
俺も差し出された手を握り、よろしゅう頼んます、と言った。

「永観高2年の切原赤也っス!ここ、バケモンの配下も同然なんで覚悟しといたほうが身のためっスよ!」
バケモンのくだりから切原クンは俺にこそっと俺に耳打ちをした。

「え?バケモンって一体誰のことなん」
「決まってんじゃないっスか!幸村部長のことで「……赤也、お前はほんとに学習しないね「おおおおお俺部屋行きまーす!んじゃ!」」


切原クンは身の危険を感じたのか、自室へと逃げるように階段を登っていった。
幸村の後ろにはものすごい、どす黒いオーラがじわじわとにじみ出とる。怖!
しかもそれで笑顔でニコニコしとるんやから、更に怖いわ!
これはほんまに、切原くんが言うように覚悟しといたほうがええかもしれ「そうだね、ある程度の覚悟は必要かな」

「えぇえぇええぇ!ちょう!自分!心読むんはナシや!」
「…フフ、冗談だよ。で、部屋なんだけど。1階の奥から2つめの空き部屋があっただろ?そこがお前の部屋だよ白石」

……ぜんっぜん冗談には感じひんかったけどな。
「そうか。解ったわ。おおきに」
「あと、一応言っておくと、2階の一番奥から俺、遠山、赤也、越前で、
1階の一番奥から千歳、白石、あとまだ帰ってきてないみょうじって子と、宍戸の部屋順になってるよ」


「へー、まだおったんやな。みょうじクン?は男子なん?」
「そうだね」
「うっわ、男ばっかやん。めっちゃむさくるしい寮やな、ココ…」

8人も高校生が居て、全員男とは。
なんちゅーかこう、華が欲しかったなぁ。



「…あ、違った。一応女だったな。男みたいなのには変わりないけど」








えぇええぇえぇえぇえぇ

「ゆ、幸村…自分、狙ってやっとるん?悪気はないん?」
どっちにしてもタチ悪すぎや…

「フフ、何のことかな?
あぁ、噂をすれば帰ってきたみたいだね、おかえり、なまえ」
俺は幸村の視線の先を見た。


するとそこに居たのは、
なんといっても小さくて、
なんといってもありとあらゆるとこに穴開きまくってて、
めっちゃ鋭い目つきで俺を見てる(睨んでる?)けど、
俺にとってはれっきとした女の子だった。



「…ただいま。…だれその人」
「朝大家さんが話してただろ?」
「おぼえてないから聞いてんだっての」
「ほんとなまえはばかだよね。その開いてる穴から聞いた話も全部抜けていく仕組みになってるの?」
「はぁおまえけんかうってん「なんだって?」……ナンデモナイ」

なまえと呼ばれた子はさっきの俺を見る顔とは一変して、ものっそい青ざめている。
…なんか、幸村の此処でのポジションが解ってきた気いするわ…あんま解りとうなかったけど…。


「どうも、今日からここで世話になる白石蔵ノ介や。よろしゅうな。みょうじサン」
俺はみょうじサンに向けて一例した。すると管籐サンは俺を見て、

「…どうも、よろしく。にしてもこんなとこ引っ越してくるなんて物好きなんだな、あんた」
「そうか?割とえぇ感じやで、俺にとっては」
「…やっぱり物好きじゃん」

物好き、なぁ。どのあたりなんやろ。
まぁ、なんとなーく解るけど…うん。










「あらなまえちゃん帰ってたのねー!お帰りなさい」
大家さんがみょうじサンに言った。

「ばーちゃんただいま」
「なまえちゃん、早速で悪いんだけど、卵買ってきてくんないかねぇ?ひとつ足んなくてねぇ…」
「なんでだよほかにいるだろ暇なやつ」
みょうじサンがおもっきし渋っている。

「文句言わずに行ってくるんだね、なまえ」
「ゆゆゆゆゆ幸村わわわわかったよ行くよ行けばいいんだろ行けば「1回言ったら解るからね「イイイイッテキマース」

「あぁ白石」
みょうじサンご愁傷様すぎるなぁ…と思いながら玄関のほうを見ていると、
幸村が俺を呼び止めた。

「え?何や幸村」
「悪いけど、ついて行ってやってくれないか?なまえ1人じゃ危ないから。女だし。戸籍上はね。
それにお前も早くこの辺の地形に慣れるほうがいいだろ」

こ、戸籍上て……


「わかったわ。ほな、行ってきまーす」
俺はスニーカーを履き、
数十メートル先を歩いているみょうじサンを呼び止めた。



「白石?どうしたんだよ」
みょうじサンは少し吃驚した顔で俺を見た。

「夜遅いし、ついてったれって幸村がな」
「…幸村がねぇ。明日雪でも降るんじゃねーの」
「そない言わんと。ほな行こか」
「……勝手にしろよ」

とだけみょうじサンは言うと
また俺の少し先を歩いた。







「で?どこまで行ったら卵買えるん?」
「すぐそこのスーパーがいちばん安いっていつもばーちゃんが言ってるから、そこ行く」
「りょーかい」

必要以上にみょうじサンは話そうとしないので、
俺も必要以上に話しかけはしなかった。




「ついた。ここ」
みょうじサンはスーパーの前で立ち止まり、そう言った。

「なんか、大きいトコやねんな」
「ボロ荘の周りはなんもねえけどな、ちょっと歩いてきたら色々あんだよ」
「へぇー。そうなんや」
「…いつも、ここで買いもんしてるんだよばーちゃん」


みょうじサンがぽつぽつながらに話す。
なんや、感じ悪いとかやのうて、単にみょうじサン、
…………人見知り?
やとしたらだいぶ、見てくれで損してるよなぁ…。


「…んだよじろじろ見て」
そういうみょうじサンの顔付きは、
また出会い頭みたいな顔をしてた。

「おぉ、すまんすまん。ほな卵買おか。…どこや?」
右も左も解らない俺をみてみょうじサンは、

「…へんなやつだな、おまえ」
と言った。
ってか…あれ?

「んだよ今度は」
みょうじサンは眉間に皺を寄せて言う。

「いや、いまちょっと笑わへんかった?」
「は?」
「せやから、今ちょっと笑わへんかったか?」

と言うとみょうじサンの顔はちょっと赤くなって、
「ばか言ってねーでとっとと卵買って帰るぞ!」
とぶっきらぼうに言って、
やっぱり俺の数メートル先を歩いた。

…また機嫌悪うなってしもた。
言わんかったらよかったかな。




せやけど、俺はこの、
ぶっきらぼうでちょっと感じの悪い女の子を、
何でか嫌いにはなれへんかった。


…オモロイ子、かもしれへん。


俺は小さく笑って、
みょうじサンの後をついて行った。





















































つづく




















































あとがき

第3話です。
白石って動かすの簡単なようで難しいです、、
お次は女の子めいんで書きたい。
し、ついでにわたしが好きなあいつを出したいです(笑)

ちこ





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