9.




一体全体
どうしてこうなってしまったのだろうか。























背面歩行
 09 ぬるいコーヒーと夕焼け





















事の始まりは数時間前。

「みょうじちゃん、地下の倉庫行って豆取ってきて、アメリカンね」
店長が確かにそう言っている。が、一向にあたしの身体は動こうとしない。
それどころか、何か頭がボーっとする。だるいし寒いし・・・

「みょうじちゃん?聞いてる??」
店長が再びあたしを呼ぶ。
あーだめだ、もうほんとに、どうしたってんだ今日。
あたしはよろけそうになる身体を無理矢理動かした。
「あー、地下倉庫っすね、了解でーす・・・」
「おいお前さん、大丈夫か?」
あたしの横で違う種類のコーヒーを煎っていた仁王さんがあたしを見て言った。
なんだよ、仁王さんに心配されるほど今日のあたし、そんなにまずいのか・・・?

「へーき、ですよ、へーき」
あたしは力なくそう答えると地下倉庫へ向かうべく階段を降りようとしたそのとき、


「危ねぇ!」
仁王さんがそう叫んだときは、
あたしの意識はもうどこかへいってしまったあとだった。




























「・・・!なまえっ!!あー、よかった!!」
聞き覚えのある声で目が覚める。

「あ、あかや?あれ?ここ・・・いえ・・・?」
まだボーっとする身体を半分起こした。
そういや、バイト中だったよな・・・?
どうやってここまで帰ってきたんだ?あたし・・・

「あー、えっとな、仁王先輩がここまで送ってきてくれたんだぜ。
汗だくんなってお前担いで帰ってきたときはさすがにびっくりしたぜ」
「え?仁王さんが?」
「そ」
「え、で、その当の仁王さんは一体どこに」


「仁王なら下で大家さんに捕まってるよ」

ホントにこいつは神出鬼没すぎるわ。
「フフ、さ、これ飲んで。水と解熱剤」
幸村がそう言ってあたしにお盆の上に置かれたそれらを差し出す。
「君を送ってきたあとすぐに帰ろうとするからせめてお茶でもって引きとめたんだよ。
そしたら買い物から帰ってきた大家さんに捕まってもうかれこれ3時間は経つかなぁ」
フフフと綺麗に笑う幸村。
や、笑ってねーで助けてやれや。お前ら友達じゃねーのかよ。

とか心の中でそう呟いていたら(口にだすとこえーのなんの)
あたしの部屋のドアがバタンと開いた。

「ああ、噂をすれば。おかえり、よく戻ってこれたな仁王」
「・・・・・・何なんじゃあのパワーは」
げっそりとしている仁王さんがTシャツの襟元をパタパタさせて言う。
にしてもあの大家さんから逃げてこれる仁王さん、やっぱり流石だなー。

「おお、みょうじ、目ぇ覚めたようやの。どうじゃ?気分は」
「あー・・・まだちょっとボーっとするけどもう大丈夫です、その・・・」
なんか言い出しにくい。

「ん?」
仁王さんがあたしのベッドの前でしゃがみこむ。
「お、送ってくれたって赤也から聞いて・・・その、
ありがとうございました、ほんとに」

あたしはぺこっと頭を下げた。
仁王さんは、すこしだけ目を丸くして、

「気にしなさんな。まぁでも、熱も下がっとるみたいでよかった」
そう言ってあたしの頭をぽんぽんと叩く。

「・・・!」
ボーっとしているあたしの意識は徐々にはっきりしてくる。
で、それを見ている仁王さんはくつくつと笑ってやがる。
ぜ、ぜったいわざとだ・・・!!

「さぁて、俺はそろそろ帰るかの」
と言って仁王さんは身体を大きく伸ばした。
「仁王、何で帰るんだ?」
「あー、みょうじ担いできたけバイクも置いてきちまったのう。電車乗って帰るかー」
「いま、23時半回ってるけど」
「え」
仁王さんが今までに聞いたことない声を出した。
そう、みんなで壁に掛けられた時計を見やると、幸村の言う通り、時刻はもう23時半を過ぎていた。
「マジか・・・」
やっちまった、と言う仁王さん。
あれだ、今となったら大家さんとの3時間の肉弾戦が確実に余計だ。
ってか、大家さん、もしかしてこうなるのを見越して仕組んだか?
「あっちゃー、確か終電、23時20分代っしたよねー・・・」
赤也が携帯を弄りながら言う。

「なんか、ごめんなさい」
あたしは心の中で大家さんを恨みつつ仁王さんに謝る。
元はと言えばこうなったのはあたしの所為でもある。
迷惑をかけてしまったことが何より申し訳ない。

「お前さんが謝ることはない」
そう言って仁王さんはフッと笑ってまたあたしの頭を撫でた。
たまに、この人は、見た目に似つかわしくない、すごく綺麗に笑う。
綺麗過ぎて、見とれてしまうけど、それでもあたしはまだ、ちょっとこの人が苦手だ。
全部見透かされてしまいそうな目を持っているこの人が、やっぱりちょっと、怖い。


「・・・そうだな、部屋ならなんとかなるか」
幸村が聞こえるか聞こえないか解らない声でそう呟く。
そして幸村は仁王さんに向き合って言う。
「仁王、今日はもう遅いし、泊まっていけよ」
「幸村?でも」
「さっすが幸村部長!いっすねそれ!ぜひ泊まっちゃってってくださいよ!仁王先輩!」
「あー・・でもなぁ」
完全にあたしを残して乗り気の幸村と赤也。
仁王さんは結構渋ってる。意外と気い遣いなんだなこの人。
「俺たちの間柄で遠慮は要らない」
「でも、ええんか?悪いぜよ」
「悪くないよちっとも。部屋ならなまえのがあるから」
「ブッ」
飲み込もうとした解熱剤と水が勢い良く辺り一面にスパーク。
スパークしたのはどうやら仁王さんの脳内も一緒らしい。

「ゆ、ゆきむら?」
「まてよちょっとほんとまてよなんでなにをどうしたらそうなるんだよ」
「だって他のやつらじゃ互いに気を遣うだろ」
「あたしはどうなるんだよ!大体赤也の部屋だってあるだろ!」
「赤也はゲームばかりするし寝相も最悪だし仁王がもたない」
「ちょっひでっ」
「あたしの部屋でもあたしがもたねーよ!!」
「ゆ、幸村、俺はどっか空いとるトコで構わんぞ」
さすがの仁王さんもこればっかりは焦ってるみたいだ。
「大体あたしは病人なんだぞ!ふざけんな!」
「それだけまくし立てる元気があればもう大丈夫だろ」
「大丈夫じゃねーよお前の思考回路が大丈夫かよ」
なんて言ってしまった、あとのまつり。



「なまえ、お前今日床で寝ろよ。仁王がベッド。もしお前がベッドで寝てたら明日の朝ごはん抜き」
「ちょっはっまじでふざけんな「別にトイレで寝てくれても俺は構わないんだけどね「わかりましたあたしの部屋どうぞ仁王さん」

ずぶずぶと謎の黒いオーラに包み込まれそうでいろいろ危機を感じたので
あたしはとうとう咄嗟にそう言ってしまった。
「解ればいいんだよ解れば」
「・・・ゆきむら鬼ばば大魔王」
「お前も物わかり悪いみたいだな「ななななななんでもありませんってば」
「あとで布団はひとつ持ってくよ、仁王。
なまえが邪魔ならいくらでも蹴落としてくれたらいいから」
「お、おう、ありがとな」
「赤也、あとで風呂の案内だけしてやってくれ。俺はもうお先に寝るよ」
「了解っす」
「なまえも、今日はもう寝ろよ」
「だれがねれるんだよこんなんで「聞こえないな「オヤスミナサーイ」

なんかぐんと熱が上がった気がする。
明日休みでよかった・・・夜はまだまだ長そうだ・・・。

































つづく


















あとがき
だいぶご無沙汰になっています…こっそり更新!です!
もうなんか四天と越前くん出てきてないしほんとにごめんなさいです。
しかし女の子と仁王さんをぐんと交流をもたせたかったの!
あんな男前と同じ部屋で寝るって、ほんと、なんもないほうがおかしいな!
わたしなら喜んでワンナイトラヴしてきま(略)
次はまたどういう話にしようか思案中です!気長に待っててくださいね!
1万打リクエストのほうも消化していきますので気長にお待ちくださいまし!

ちこ



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