8.




「皆、ちょっといいか」
朝ご飯をかけこみつつ、学校の時間に迫られている俺たちを、
幸村が呼びとめた。






「おう幸村、どうした」
俺をはじめ、他のやつらも幸村のほうを見た。

「今日、大家さんが体調不良でどうしても来れないらしいんだ」
「えええええー!!!ほな、夜メシはどないするんやー!!!」

遠山がげんなりした様子で言う。
お前…メシの心配しかすることねぇのかよ…。

「うん、だから今日は俺たち全員で当番を割りふりする。みんなよろしく頼む」
「そやかて、どないな割り振りなん?今日は千歳も帰ってきとらんみたいやし…
7人で割り振らなアカンやん」
幸村の後に、白石が言った。

「ああ、夜ご飯は全員で作るよ。夜ご飯の買い出しがなまえと白石、
洗濯物が越前、食器洗いが切原と遠山、風呂洗いが宍戸だ」

「ちょちょちょちょっと待てよ幸村」
なまえが言った。

「なんだなまえ、どうかしたか」
「なんで当のお前がなんもしねーんだよ」
「いちいち言わないと解らないのかなまえは?
俺はお前たちがちゃんと出来るか見てないと駄目だろ」
「いやいやいや答えになってねーってんだよ「全くほんとになまえはバカだね「バカ関係ねーだろ!
「なに?なにか問題あるの?俺が決めたことに「ナナナナナナンモナイ」


なまえが青ざめてやがる…。
まぁ、あれだ、無理もねーよな…。









今日もなげえ1日になりそうだな………。








































背面歩行
 08 壊れかけのofuro




















































































































「あーただいまただいま」
学校を終え、帰ってくると、
いつもとは違ってがらんとしたボロ荘だった。

あー、おばちゃんがいねーとこうも違うんだな。
というか朝、幸村から家事割り振るって言ってたの
すっかり忘れてたぜ……俺、激ダサだな。


「ああ宍戸クン、お帰り」
おばちゃんの代わりに白石がリビングから顔を出した。


「宍戸ー!!!聞いてやー!!コシマエがなー!!
ワイがとっといたお菓子勝手に食いよってん!」
「宍戸さん、違う。お前がこの前俺のやつ勝手に食ったからだろ」


あー……
また始まったぜ………。

「ったく、しょーもねーこと言い合ってねーで朝幸村に言われたことちゃんとや」
「大体なぁ!コシマエのて書いてなかったやんか!」
「いちいち書いてないとわかんないのかよ、まだまだだね」
「なんやてー!!!」
「なんだよ」


聞いてねーし…。


「おいお前ら、いい加減にし」
「もう今日という今日は堪忍ならん!」
「それはこっちのセリフだっての」



ガッシャーン



「あ」
「げ」




……やべぇ。
面倒なことに巻き込まれねーうちに退散し……




「やっぱりお前たちか」
「ゆゆゆゆゆ幸村さ」
「幸村!ワイちゃうで!コシマエが!!!「は!?俺じゃない!お前が暴れまわるからだろ!「もういいよお前ら」


もう幸村がどこからどのタイミングで出てきたかっていう野暮ったい質問はスルーだな。
その幸村のどす黒いオーラを目の当たりにした越前と遠山が凍りついている。
あー、面倒に巻き込まれねーうちにくわばらくわば…



「で宍戸」

ゲェエェエェ


「ななななななんだよ幸村」
幸村がもはや気持ち悪いレベルの笑顔を
俺に向けて言った。

「フフ、お前、この場に居ながらこの2人を止めなかったのか?」
「いや!ちげーよ!俺は何回も止めたけどこいつら俺の言うことなんか聞きもしねーで「止めなかったのか?「すすすすすすんません」


ななななななんでだよ!
ってか俺全く関係ねーだろうが!
なんでいつもこんな目に………




「まあだけど過ぎたことだからな。越前と遠山は朝俺が割り当てた当番以外に外の掃除だ」
「な……!」
「ええー!!!!なんでなんやー!幸村ー!」

越前と遠山が文句ありまくりな表情をしている。
…ま、自業自得だな。


「あぁ、夜ご飯までに終わらせろよ。あと30分で掃き掃除だ。
あとゴミはちゃんとゴミ袋に入れて捨てるんだぞ。あぁ、宍戸は2人はサボらないように見ていてくれ」
「はぁ!?マジかよ!!」
「マジだよ。元はと言えばお前がちゃんと止めていれ「わわわわわかった!ちゃんと見といてやるよ!「ああ、よろしくな」


と言って幸村がその場を去っていった。
ったく…何で俺がこんな目に合わねーといけねーんだよ!!




「…幸村の鬼ィ」


遠山がぼそっとそう呟いのも束の間。
だから!お前は学習しろっての!!!!!!















「…フフ。全く反省していないみたいだな遠山は」
「ええええええゆゆゆゆきむら聞こえとったんかいなあああああ!!!!」
「俺を鬼呼ばわりとは、大した度胸じゃないか(にこにこにこにこ)」

やべえ。これはやべえ。
俺はもはや遠山に同情すら覚えた。
越前もその横で、ハァとため息をついている。


「そうだな。遠山は外の掃除が終わったらトイレ掃除だ。サボったら夜ご飯は抜きだからな」
「ええええええー!「何だ?文句でもある「ああああああるわけないやーん!「そうだよな、フフ」


それだけ言うと幸村は今度こそ場を去っていった。
がっくりとその場にうなだれる遠山。激ダサだな……。







































「いいかお前ら。ちゃんとやれよちゃんと」
俺は外で箒で掃き掃除をしている越前と遠山に言った。

「もう1日に何回も幸村さんにキレられるのはこりごりっすからね」
「せやでー!やからワイ、ちゃんと外掃除もトイレ掃除もすんねん!」


さすがに懲りたのか、2人は真面目に掃除をしていた。
ったく…大人しくなろうと思えば出来るんじゃねーかよ…。





そう思っていると、
2人が「終わった」と俺に言った。早いな……。



俺は2人が掃除したところをひとしきり見渡すと、
確かにちゃんと綺麗になっていた。
こいつらなりにちゃんと集中してやってたんだな。なかなかやるじゃねーか。


「よぉし。んじゃあ中入るか」
「あ、俺、洗濯物見てこないと」
「ああーまだトイレ掃除あるわー…」

越前と遠山はそう言って家の中へ入っていった。
俺も、風呂洗わねーとだな。






そう思いたって俺は風呂場へ向かった。

風呂場の照明をつけて、
風呂用のブーツを履き、
ブラシを手に取り風呂場の床を洗い始めた。


「ブラシがこれ1つしかねーってことは……
こいつで床も浴槽も一緒に洗ってんだな」

俺は構わず床を洗剤で泡立て、よく磨いたあと、
浴槽を洗い始めた。ひとしきり浴槽も磨いたあと、
シャワーの水で泡を落とし始めた。





しかし、


「……? あれ…?」

いつまで経ってもシャワーから水が出てこない。
俺は水道の蛇口を何度も右に回したり、左に回したりした。


「なんでだ…?なにがどうなってんだよ」
変わらず水道を回し続ける俺。



























すると、
何ということでしょう。














































「あああああああああああっちゃああああああああああああ!!!」
俺の悲鳴が風呂場中にこだました。











































































「……えーと、キャベツも買うたし、葱も買うたし。
みょうじサン、そっちはどないや?」
「おう、たこも天かすも全部おっけー。
幸村に言われたとおり、ちゃんと安いやつにした」

紙に書かれた材料をカゴに入れてみょうじサンが言った。
そうして俺らはレジへ向かい、会計を済ませる。

そういや、みょうじサンと買い出し来るん2回目やな。
前来たときは右も左も全然解らんかったっけ、俺。
今となってはもう、このスーパーの店内図はパーフェクトに理解しとるけどな!
……ってちゃうやん、重要なんは、みょうじサン、と一緒に来とることや。





みょうじサンは相変わらず愛想はあんまないけど、
なんか少しずつ、うちとけられてきてる気がすんねん。
その証拠に、たまに、ほんま一瞬やけど、よお笑ってくれるときがある。
俺、その、たまに見る、みょうじサンの笑うた顔、ほんまに好きや。
せやけど、なんや気になることがあんねん。
これはあくまで俺の勘、やねんけど、もしかしてみょうじサンってな……








「……いし!白石!」
「………! お、おお、何や?」
「何回も呼んでたんだぞ」
「はは、すまんな」
「……考えごとか?」

みょうじサンが俺の顔を少し覗き込んで言った。
あぁ、もうなんか、いろいろセコイ。


「まぁ、考えごとには変わりないんやけど」
袋3つあるうち、俺は2つを持って歩き始める。

「…白石のわりに珍しいな」
「はは、俺かて考えごとの1つや2つはするよ」
「……なんか悩みでもあんのか」


みょうじサンがぼそっと言った。


「おー、聞いてくれるん?」
「……言ってみろよ」
「浮いた話になるで?」
「言ってみろっての」

そう言うとみょうじサンは棒つきのあめちゃん(いつの間に買うたんやら)の
包装紙を破って口の中に入れた。



俺はみょうじサンの、
少し前を歩く。



「まあ単刀直入に言うとやな。ちょう気になる子がおって」
「ふーん」
「せやけど、その子には何か、ほかに気になるやつが居るみたいやねん」
「なんでわかんだよそんなの」
「いつもポーカーフェイスな子やけど、その気になっとるっぽいやつと居るときだけは、
なんやその子も、えらいナチュラルになっとるように見えるねんな。まああくまで俺の勘やけど」


あー、もう、自分で言うとってなんか、
ちょっと嫌なってきたわ……。


「んじゃあ、そいつに聞いてみたらいいじゃねーかよ」
みょうじサンが俺に向かって言う。




「え?その子に?気になっとるやつ居るやろ?って?」
「だって悩んでる時間がもったいねーだろ」
「そんなん、なかなか聞けへんモンやで」
「度胸は要るだろうけど悩んでるよりかは「ほな聞くわ」








































俺はみょうじサンの前に向き直る。
みょうじサンは、目を丸くして、
きょとんとした顔で俺を見ている。





「みょうじサンは」
「え?」
「千歳のこと好きな」







































































「あああああああああああっちゃああああああああああああ!!!」


家の中(どうやら風呂場)から聞こえる1人の声。


「………?」
「この声…もしかして…」
「宍戸…クン……?」



俺らはとりあえず、
家の中へ入った。












































































「……で、どうすんの今日の風呂」
越前クンが呆れながら言う。

「風呂ナシとかじゃねーだろーな!キツイって!」
次いで切原クンが言った。

俺も、切原クンに同じやわ。
なんでも、ここまでの経緯を大まかに説明すると、
今日風呂洗い担当やった宍戸クンが風呂を洗っとって、
水が突然出えへんようになったみたいで。
何回蛇口をひねっても全然出てこんくて、
かと思ったら急にめちゃくちゃ熱湯が出てきたらしいわ。
それがあの、さっきの悲鳴やったみたいで。
そんで、結局、水はまたちっとも出てこおへんみたいやわ。今ココな。




「でも、前から風呂場の蛇口、おかしくなかったっけ」
「あぁ。で、いい加減業者に来てもらうことにしたよ」
「マジか!で、いつ来れんだよ?」
「それが、2週間は掛かるそうなんだ」
「に、2週間て!その間どないするん……?」
「何でも、うちの部品がすごい古いらしくてね。取り寄せるのに時間が掛かるそうだ」
「げー!やっぱりボロっちいから「赤也、ボロボロばっか言ってると「じじじじじ冗談っス!」
「(ハァ)で、幸村。どうすんの2週間、風呂は」
みょうじサンが言う。

「こういう事態だからな。皆で当分の間は銭湯に行くしかないな」
「せ、銭湯……」
「おおおおおー!銭湯やー!ワイ、行ったことないねん!銭湯!楽しみやわー!!!!!!」
「金ちゃん…静かにしとき」
「とにかく、明日には大家さんも来れるそうだから、このことはちゃんと話しておくよ。
お風呂は夜ご飯のあとに皆で入りに行こう。ちょっと歩くけど。じゃあ、夜ご飯の支度だな」


幸村がそう言うと、
他のやつらも、まぁこういうしゃーない事態やし、
納得しとるみたいやった。










「白石」

話が終わったところで、
さっき買うてきた材料を袋から取り出している俺に、
みょうじサンが声をかけてきた。

「え?どないしたん」
「さっき、なんか言いかけてたろ」
「………あぁ、」
「なんだったんだ?」

あくまできょとんてしてるみょうじサン。


「……あぁ、また今度にするわ」
「? いいのか」
「俺としたことが先走りすぎた気ぃもするしな」
「?? おう」

みょうじサンは依然、
不思議そうな顔をしたままだった。





























































いまはまだ、
気づいとらんくてもええよ。





せやけど、いつか。
いや、きっと、近いうちに、
自分に伝える日が来ると思うわ。

そんときは、
覚悟しとってな、?



























































つづく






































































あとがき

はー!長かった!
なんだか、だらだら書いてしまいましたが、
こういうだらだらした感じで進んでゆきます!
これからもよろしくお付き合いくださいませ!

ちこ


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最後までありがとうござます!


よろしければポチっと。





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