6.




キーコンカーンコーン・・・






「っしゃー!今日も終わった終わった!なまえー、帰ろうぜ!!!」
赤也があたしに言う。ずっと寝てたくせによ・・・人の事言えないけど。

「あー、今日バイトだわ。ごめん」
「マジか!ってか今週多くね?」
「なんか1人辞めやがってよ。おかげで今すんごいシフトで」
「大変だなー。ま、頑張れよ!おばちゃんには言ってあんのか?」
「・・・げ、言ってない。忘れてた・・・」
「しゃーねーな!言っといてやるからよ!帰り気をつけて帰ってこいよ!」
「おーう、ありがとう。じゃ、行くわ」

あたしはそう言って赤也と別れ、
バイト先へと向かった。







学校からバイト先は歩いたら20分くらいかかる。
やっべ。今日ギリギリだな。
こういうときは・・・抜け道使うか。



あたしはそうひらめき、
いつもは使わないバイト先への近道を使うことにした。



ちょっと駆け足で歩いていると、
後ろから声をかけられた。んだ・・・?




「永観高の、みょうじサン、だよねー?」
やけに甲高い声が耳をつんざく。無視るか。

「ちょっとー?無視はないんじゃないの?」
さっきの声とはまた違う声がした。
「人が呼んでるのに・・・・・・・・・・・・・・・無視してんじゃねーよ!」
また別の女がそう言い、あたしを殴ろうと拳をふるった。




・・・・・・まる見えなんだっての!


あたしはそこでようやく女達のほうを振り向き、
女C(仮)の拳をかわしカウンターを仕掛けた。
すると女C(仮)はその場に崩れ落ちた。

「や・・・やっぱり・・・ちょっとはやるみたいじゃない・・・」
お次は女B(仮)が冷や汗まじりに言った。
ってかこいつら今のであからさまにビビリ入りやがったな。



「・・・てめーら何モンだ?こっちは急いでんだよ。
ただの暇つぶしなら今度にしてくんねーか」
あたしは制服の襟を直しながら言った。

そうだ、こんなやつらに構ってるよりバイトがやべぇ。
しかも今日は確か仁王さんとだ。余計やべぇ。


「1人のしたからって調子づいてんじゃねーよ!」
「いやちっとも調子のってねーよ急いでるんだよ聞いてるか人の話」

あーめんどくせぇな。またかよ。
しばらくこういうのとはご無沙汰で平穏な生活を送ってたってのに、
またやってきやがった。だーから、暇じゃねーんだっての!


「みょうじサンさー、ちょっと強いからって調子のってない?」
「いや調子のってんのどう見たってお前らのほうだろうがよ」
「すかしてんじゃねーよ!!!!」

さっきのあたしの一撃から回復したらしい女C(仮)が
再びあたしの腹めがけて殴りかかってくる。
そして背後には、女B(仮)の気配。
挟みうちとはフェアじゃねーよなぁ・・・。
そして女C(仮)、は、学習しろ。



もうほんとにバイトの時間まであと僅かだったんで、
あたしは女2人に膝蹴り→頭突きをくらわしてやった。


目の前には安らかに気絶している女2人。
さすがに残された1人は、かなり焦ってる。


「・・・で、どうすんの?こちとら急いでんだ、
いまならなかったことにして見逃してやるぜ」

あたしは言った。
それでも女は歯を食いしばって何も言わない。
なんだよほんとにもうバイト行くぜ。


しばらく女の出方を見ていると、
女はどこかへ電話をかけている。
んだよそっちからケンカふっかけてきといていい度胸して・・・


































とかちょっといらいらし始めていたあたしの前には、
気づけばどこから沸いてきたのか解らない男、
(ヤンキーってかやばそうな類の奴らには違いねえ)の大群。


「おいおいおいおいお姉さん?えらくアンフェアじゃねーのこれ」
さすがのあたしもこの数は無理だ。
さすがに冷や汗が流れる。

「悪く思うなよお嬢ちゃん!」
「あいつらの頼みは断れねーからな!」
「お前がみょうじなまえねえー!噂には色々聞いてっけどマジでチビだな!」
「すっげーピアスの数!女かよマジで」
「さすがのお前もこの数は無理だろー!!」

ゲラゲラとあたしをあざ笑う男等の声。
あー、ぶっ潰してやりてーけどこの数だと隙もねえし勝ち目がねえ・・・。

ってか今日こんなんでバイト行けんのか?
寮帰っても絶対みんなにやいやい言われるな・・・特に幸村・・・。
ばーちゃんはまた派手にやったねえって言いながら手当てしてきて。
赤也はきっとあたしよりも腹をたてて。
宍戸は激ダサだなって言ってくる。
遠山はやられたらやり返すんやねーちゃん!とか言うだろうし、
越前はなまえサン、まだまだだねってまた言いやがるに決まってる。
白石はどこ傷むんや?って心配そうに聞いてくるだろうな。
千歳は・・・あいつ・・・帰ってくるかな。




みんなの顔が浮かぶと同時にこれから起こるであろう事態に、
なんともめんどくさくなってしまった。

ハッと我に返ると、男共が一斉にあたしめがけて
殴りかかってくる絵が見えてきた。



万事休す・・・か。
せめて顔だけは勘弁してほしいな。
これでも一応女だからな。


そう思い目を閉じた。






































しかし、目の前に倒れていたのは。

あたしじゃなくって、さっきまで威勢よくあたしめがけて
殴りかかろうとしてきていた男共の一部だった。



「・・・アレ?」
あたしはぽかーんとしたまま動けない。
それはまだ無事な男共も同じようだった。


「な、なんだお前!!!?」
倒れている男共の仲間が言う。

あたしもその男共の仲間につられ、
思いがけない救世主のほうを見やった。




すると、救世主はまさかの、
とんでもない奴が、そこに立っていた。




「テメーらこそ、男だけで女1人をシメてんじゃねーよ!
無様にも程があるぜ!」


目の前の男はそう吼えた。

びっくりした。
そりゃあもうびっくりして、一歩も動けねえ・・・。















「じ、仁…」
そう、目の前に立っていたのは、
久しぶりすぎる再会の幼なじみだった。

「なまえ、テメーもやすやすとやられてんじゃねーよ!
プライドがねーのか!お前には!」
仁はあたしにそう怒鳴った。
うわ、やっぱキレたときの仁、超怖えぇ・・・。


「や、やべーよ!こいつ!永観高3年の亜久津仁だぜ!
こんなやつがバックにいたんじゃ俺らに勝ち目ねーよ!!」

男共がテンパってる。
無理もねーよな・・・仁相手に勝てる高校生がいたらあたしも見てみたい。



「オイ!みょうじに亜久津がついてんのなんて聞いてねーぞ!」
「だ、だってあたしらもそこまでは知らなくて・・・」
男共がさっきの女3人組に怒鳴ってる。や、やっぱすげーわ、仁の力。


「ゴチャゴチャ言ってんじゃねー!!」
仁がそう言うと男共は次々とぶちのめされていったり、
逃げるように去っていった。

「う・・・うそでしょ・・・」
「ちょ、ちょっと亜久津!あたしら女だよ!」
「や、やめなよ、女やっつけるなんて男のすることじゃないって!」
女共は終始テンパってる。

「俺に指図すんじゃねえ。第一、テメーらの仲間も女相手に本気でぶっ飛ばそうとしてたじゃねーか。
しかも数十人対女1人で」
仁はそう言い女3人を足蹴りだけで一瞬でのした。
アーメン。名前も知らねえ女3人。


「あ・・・アンタ・・・みょうじ・・・と・・・なんの関係・・・よ・・・」
女の1人が途切れ途切れにそう言った。
仁は、





「腐れ縁だ」
それだけ言って、ドカッとまた女を蹴った。
女相手に容赦ねーな・・・。
女のほうは泡を吹いて安らかに気絶されている。




























「お前も容赦ないねえ、仁」
あたしは立ち上がって服についた汚れをぱっぱと祓いながら言った。

「あれぐらいのしとかねえとまたこいつらお前を潰しにくるだろうが。
お前も詰めが甘いんだよ、なまえ」
仁はあたしのお腹を軽く殴って言った。

「やぁ、でも助かったよ。ありがとうな仁」
「勘違いすんじゃねえ。わざわざテメーを助けにきた訳じゃねえよ。ただの通りすがりだ」
「ただの通りすがりでも助けてくれたんだから、ありがとうな」
「・・・ケッ。で?元気でやってんのか、あそこで」
仁はぶっきらぼうに言った。

「あぁ、元気にやってるよ。仁が出てってから、皆寂しそうだぜ」
「・・・特に遠山あたりか」
「そうそう」
「あいつはずっとやかましいからな」
「でも仁の居た部屋にさ、新しいやつが来たよ」
「・・・ほぉ。そいつは良かったんじゃねーの」
「まぁな。遠山と千歳の知り合いらしくてさ。2人が特に喜んでるよ。
お前もたまには顔だしにこいよ、仁」

あたしがそう言うと、
仁は乗ってきたたんしゃにまたがって言った。

「バカかお前は。一度出て行った奴がそう易々と顔なんか出しにいけるかよ」
「バカは余計だっつの。あー、ばーちゃんがモンブラン買ってきてくれんぞ」
「(ぴくっ)・・・まあ、暇なときだったら、行ってやる」
「(単純だなやっぱ)おー、赤也も喜ぶぞ」
「あいつも長いこと会ってねえからな。・・・で、なまえお前、急いでたんじゃねえのか」
「・・・・・・・・・・・・・・・アレ・・・・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっべぇ!バイト!」

すっかりバイトの存在を忘れていたあたしが、
携帯のディスプレイで時刻を確かめると、時刻はすでに17時半になっていた。


「か・・・完全に遅刻だ・・・」
呆然としてあたしがうなだれていると、
「お前はやっぱりバカだななまえ。・・・・・・・・・乗れ」
仁はそう言うとあたしにヘルメットを投げた。

「え?なに」
「見てわかんねーのか、送ってやるって言ってんだよ」
仁がいらっとしながら言った。

「・・・いいのか」
「とっとと乗れ」
「やっぱ仁はいいやつだな」
「・・・振り落とされてーのかお前は!」

やいやい言われながら
あたしは仁のバイクのおかげでかなり早くバイト先へ着くことができた。


「さんきゅー仁!マジで大助かりだわ!」
「うるせー、いいからとっとと行きやがれ」
「今度来いよ!マジでモンブラン買ってきてやるから!」
「しつけーぞ。じゃあな」


仁はそう言い、あっと言う間に
たんしゃで元来た道を戻っていった。












「・・・・・・ほーう。男に乗っけてもろうて出勤か。みょうじも裏でやる事はやっとるんやのー」
カフェの扉からにやにやしながら仁王さんが出てきた。

「神出鬼没すぎっしょ仁王さんしかもそういうのじゃないんで」
あたしはわざとうんざりしながら仁王さんに言ってやった。

「こん前お前さんとぶつかったときに居った男といいさっきの男といい、みょうじもやるなー」
「人の話聞いてんのかよあんたは」
「で、どれが本命なん?」
「やだから人の話聞けよ」
「つれないのう。ま、今はこれ以上聞かんでやるけ早う着替えてきんしゃい」
「ちょっと待てよ今はって何だよ今はって」
「(プッ)そうじゃのー、他のバイトの奴らにみょうじはそっちのほう「も」、
かなりスゴイ、って言うてもよか?」

仁王さんがにやにやしている。
さ・・・最悪だ・・・!


「ちょちょちょやめろよかなりすごいってなんだよ何にもすごかねーよ!」
「(面白すぎじゃ)そうじゃのー、黙っといてほしいか?」
「あたりめーだろ!バイトしづらいにも程があるわ!」
「(腹痛いぜよ)ならバイト後、お前さんの家に招待してくれ。それでチャラじゃ」
「・・・・・・ハ?」


まてまてまて。
何をどうしたらそういう結論になるんだ。

「・・・思いっきり嫌な顔しとるのう。あー残念じゃ。みょうじとは短い付き合いやったな・・・」
「おいおいおい何自己完結してんだよ!しかも辞めるみたいな言い方やめろよ!」
「(ブッ)あーならお前さんの家に招待してほしかーどうしようかのう・・・」
「わかった!わかったよ!つれてけばいいんだろつれてけば!」
「さすがじゃな」

このときの仁王さんの顔は
いつまで経っても忘れることはないだろう。






























































































背面歩行
 06 久しぶりとまさか







































































つづく






























































あとがき

いやいやいやまさかのこんな展開(笑)
次回はどうなるでしょうか!こうご期待!(笑)
そしてメンバー全然出てなくてすみません(笑)
これだけ見たら仁王さん寄りに見えなくもないよね(笑)

そしてまさかの亜久津だったでしょうか!
彼を登場させた理由は、たんに私が亜久津ずきだからです(笑)
無人島の彼はほんまにやばいぜ!

ちこ





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