21、怒涛のはじまり





「だ〜〜キバ!しょんべん遅えと思ったらなに女の子とイチャこらしてんだってばよ!」

「あ〜うるせえのが来た」

「なんだとおー!」

「イチャこらしてねえっての!幼馴染とじゃれてただけだっつーの」

「あ、そっか…お前の幼馴染だっけ、えーと、なまえ、ちゃん?だったよな!」

ニカァと笑うナルトくん。この人もキバと同じ太陽みたいに笑うなあ…。

「うん。そうだよ。」

すると、ナルトくんの後ろからぜえぜえと咳き込む声が聞こえた。

「ナルトー…急に走りださないでよ。ボク、久しぶりに走ったよ…」

「チョウジお前運動不足すぎだ」

「あ、」

「よ、」

前かがみになって咳き込むチョウジくんの後ろからひょっこりと奈良くんが現れた。
奈良くんと目が合うと手を軽くあげて挨拶をくれる。


「つかなまえちゃんってよく花壇に水やってるよな?美化委員なのか〜?」

「えっと…、」

「まさかまたカカシか?」

奈良くんが哀れだ顔をしていたので私は大きくうなずいた。するとナルトくんがビクっと肩を震わして、

「うげげげげ〜カカシ先生の被害者がここに!俺の友よ〜〜〜〜〜〜!」

うるうると涙を溜めて両手をガシっと掴まれた。

「おっかねえよな!よな!」

「う、うん」

「カカシ先生なに考えてるか全然わかんないし、それに逆らうとすげえ怖いってばよ!」

「あ、わかるよ。ナルトくん」

「だよな〜!こんなところに同士がいるとは思わなかったてばよ。今日からダチだな!」

「うん」

ブンブンと握られた両手を上下に振られる。なんだかそれがすごく微笑まして思わず笑みがこぼれた。


「おい、ナルト」

「なんだよキバ」

「いつまで握ってんだよ」

「なんだよそんな睨むなってば……あ〜、お前それ焼きも……あだ!」

「それ以上いったら殴るぞ」

「もう殴ってんだろー!いてーなこのやろ!」

「ちょ、ちょっと二人ともケンカはだめだよ」

困ったチョウジくんが二人の間に入ってケンカを止めている。その姿を私はただ茫然と眺めていると隣で奈良くんがため息をついた。


「気にすんな。あれ、いつものことだし」

「あ、」

「お前も教室から俺らのこと見てたんだからよ、なんとなくわかんだろ、あれ」

「あ、うんそうだ……って!!」

急に爆弾を落としてくる奈良くん。恥ずかしくて真っ赤になって奈良くんを見るとまたいつもの顔をして笑っている。

「もう…、恥ずかしいからやめてよ」

「悪い悪い。ついからかいたくなるっつーか」

「…」

「それに、キバとも仲直りできたようだしな」

「え?」

「お前の顔、昨日と違ぇからよ」

「……」

「ホっとしたわ」

「…ごめんね。心配してくれて…たんだよね?」

「なんで聞くんだよ、心配したっての。まあ、お前ら幼馴染つーから大丈夫とは思ってたけどよ」

「?」

「幼馴染っつーのは絆がちげえからな。」

ニカっと笑う奈良くんに、私はさっきのキバの眩しい笑顔を思い出して、大きく頷いた。



「さーてとそろそろ止めるか、めんどくせーけど」

そう言って二人の口ゲンカの間でどうしもなくしてるチョウジくんの腕を引っ張って救出する奈良くんは、キバとナルトくんの頭にそれぞれチョップを一発食らわした。

「もういいだろ、チャイム鳴んぞ」

「え、もうそんな時間になんのか!?」

「やばいってばよ、1時間目カカシ先生じゃん!急げー!!」


二人は慌てたように、グランドに置きっぱなしにしていたカバンを取りに走り出した。


「じゃ、オレらもカバンとってから行くわ」

「あ、うん」

「じゃあ、また放課後な。忘れんなよ」

「うん!」


へとへとで疲れ切っているチョウジくんの腕を引っ張りながらキバたちのあとを追いかける奈良くんに手を振って、私も慌てて片づけを始めた。





















「お、来たな」

放課後、私と奈良くんはカカシ先生の準備室に足を運んだ。
部屋の扉をあけるとそこはまさに地獄絵図。
プリントが積み放題、資料も置きっぱなし、チョーク臭さ。
隣から小さな舌打ちが聞こえたのは、聞かなかったことにする。



「いや〜助かった。これだけひどいと掃除する気も起きなくてね。お前らがいてくれて助かった」

「つかさ、俺ら受験生って知ってんのか」

「知ってるよ」

「センセイが受験生にこんなことさせねえだろ…」

「そうだそうだ!」

便乗して声を上げると、少しカカシ先生に睨まれて私はすぐに黙った。


「正直全然心配してないんだわ。奈良の志望校は余裕で合格ラインだし、みょうじのM女高は落ちるわけないしな」

「ちょ、バカにした!!」

「してないって。M女高落ちた生徒見たことないってだけだ、」

「どうせ私は馬鹿だもん…」

「それはお前が真面目に授業受けないからな」

「う、」

「ま、とにかく。受験勉強なんて時間あってもお前らどうせしないんだろ、だったらおれが有意義に使える時間を提供してるってわけだ」

「なんつう理屈だよ…」

「じゃよろしくな!」

私たちの反論をめんどくさそうな顔であしらって、カカシ先生はさっさと教室から出て行った。

取り残された私たちは思わず顔を見合わせる。


「どーすんだよ、これ」

「どうしよう…」

汚すぎてどれから手をつけていいのかわからない。


「とりあえず、プリントの整理からするか」

「うん」

「全部捨てりゃ簡単だけどそういうわけにもいかねえし、とりあえず同じような問題でまとめて整理すっか」

「そうだね!」

「1週間で終われっかな…」

深くため息をついた奈良くんに私は励ますように笑みを浮かべた。

「大丈夫だよ!二人でやれば…なんとか!」

「…だな。うし、やるか!」


腕まくりをし、この蟻地獄から這い上がる勢いで私たちはプリントの整理を始めた。












怒涛のはじまり










[←戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -