18、修羅場の始まり





――キーンコーンカーンコーン


予鈴が鳴った音を聞きながら足取り重く教室に向かう。
すると後ろから「よ、」と声をかけられた。



「おはようさん!」

「…イルカ先生」

「風邪はもう平気…な、わけないよな」


振り向いた私を見たイルカ先生は、マスクをしっかり装備した鼻声の私を哀れむ。


「大丈夫か?学校来て」

「はあ…行きたくないって言ったら怒られたんで嫌々来ました…」

「…そ、そうか」

「熱はもう全然ないんで平気です…昨日は念のために休んだというか……」

「そ、そうか、まあ無理すんなよ」


負のオーラを放ちまくる私を苦笑するイルカ先生。
教室について、前の扉から入るイルカ先生とは別れて私は後ろの扉から入った。




「なまえ!」

「いの、おはよう」

「おはよう、もう大丈夫…な、わけないわよね」

「平気だよ。これはうつらないようにマスクしてるだけで…」

「いや、風邪のことじゃなくてさ…、」

気まずさそうに言ういのに、私は今できる精一杯の笑顔で浮かべた。


「これからさ、気持ちの整理つけていくつもり」

「…なまえ、」

「彼女いるんだもん。……諦めないとさ」

「…なにも言えね」

「うん、なにも言わないで。泣いちゃうから」

「ま、まあ男なんてシカマル以外にもいっぱいいるじゃない!ね、ねえ?」

「…ありがとういの」

「……ごめん。今言うことじゃなかったかも」

「ううん…ふえ、その通りだと思うう”、奈良シカマル以外男なんていっぱいいるよね…うぐ、」

「泣いてんじゃん」

いのがそっとハンカチを渡してくれた。私はそれを受け取って涙を拭ってありがとうのつもりで笑顔を作った。


「それにもう奈良シカマルとは会う用事もなくなっ…………、あ」

「どうした?」


「……………。」

血の気が引いていくのがわかる。


「なまえ?」



とんでないもことをした。
それは地球が滅亡してしまうほどの取り返しのつかないことだ。
色々なことが起こりショッキング過ぎて大事なことを忘れていた。




カカシ先生の、


課 題。(チーン)




「どどどどどう”し”よ”い”の”お”ぉ”!課題出してない、つかやってないよおおお」












































「あんたいつまで机にへばりついてんの?もう昼休みなんですけど」

「……外出ない。怖い。」

「はあ?じゃああんたごはんどうするのよ」

「いらない」

「なに言ってんの?食べなさいよ。余計に元気でないわよ」

「食欲ない」

「…あんたねえ。一生教室から出ないわけにはいかないでしょ?」

「でも会いたくないよ。気持ちの整理するんだから……まずは会わない方がいいの。それに他にも会いたくない人がいるんだから」

「犬塚くん?」

「あと大魔神カカシ」

「課題忘れたのはあんたでしょ?」

「だって仕方ないよあんなことがあったんだもん!覚えて冷静に課題やるほうがどうかしてる」

「でも結局カカシ先生のことだからさ会わなくったって呼び出しされ――――」






ピーンポーンパーンポーン



「3年8組みょうじなまえ、3年3組奈良シカマル。5分以内に職員室に来るように。よろしく〜」


ブチ。


ピーンポーンパーンポーン






「ほら、」

「……………い、いかないよ!奈良シカマルも来るじゃん!い、いかないからね!」

「別に行かなくてもいいけどさ。あんた行かないことによって起こること想像して言ってる?」

「…え、」

「今まで散々カカシにパシられて来てんじゃん。そのカカシがよ、あんたの無視を無視するかね〜」

「……や、やめて………、」

「別にいいのよ私は?だって関係ないもーん。ただすごい度胸だなあと思っただけよ」

「……いののバカ!」


「いってらっしゃ〜い」


半べそかきながら私は立ち上がるといのは涼しげに手を振って私を見送った。

































「5分以内って……!無理に決まってるじゃんか!バカなの?大魔神なくせにバカなの!」

「ったく、だよな。もうゆっくり行こうぜ」

「うん。そうだね………ってなななななななな奈良くん!」



ぷんすか憎き大魔神、カカシ先生の悪口をブツブツ、それでも小走りで(走ってたらさっき通りかかったイルカ先生に怒られた)職員室に向かっていた。
そんな愚痴がまた口に出てしまっていたようで、それに返事が返ってきたもんだからまた普通に返事を返したらいつのまにか私の横を歩いている奈良シカマル。

驚いて、でも胸が高鳴って、なんだか胸のあたりがすごく忙しくなっている。
でもそんな私をなんだか嬉しそうに笑う奈良シカマルに、今度は胸がズキズキした。



「相変わらずいいリアクションだな」

「…もう。驚いたよ」

「悪い悪い。つか、お前さ」

「な、なに?」

「風邪大丈夫かよ。」


私に装着されているマスクに視線を落とすと奈良シカマルは少し眉間を寄せた。
心配してくれてる…とわかった私はまた胸が痛む。
嬉しいなんて思う私を否定したいのに、できないんだから……。


「これうつらないようにしてるだけだから全然大丈夫」

「…そうか?」

「うん。あの、心配してくれてありがとう」

「まあ大丈夫なら良かったな」



「なまえ!」



奈良シカマルのホっとした顔に釣られて緩みそうになった顔が一瞬で引きつった。
その声の人物に、もしかしたら一番会いたくなかったのかもしれない。




「キバ」

隣で奈良シカマルが名前を呼ぶ。


どういう顔でいたらいいのかわからない。




「……大丈夫なのかよ、風邪ひいたって」

「う、うん。平気だよ」

「あん時のせいだよな……悪い」

「あん時?」

奈良シカマルの問いにキバは「ああ遊びに行ったんだよ俺たち。そんとき雨降ってさ」と闘争心むき出しで答えた。
そんなキバに奈良シカマルは少し困った顔をしている。


「ちょっとキバ……」

「なんだよ。本当のことだろ」


なんだかキバが怖くて、私は思わず奈良シカマルの後ろに隠れてしまった。
そんな私を不思議そうに見る奈良シカマルに、余計に瞳孔鋭くするキバ。






「お前ら遅いよ。なにしてんの?」


私には天の声に聞こえた。
思わず「カカシ様!」と叫びそうになった。


「5分以内って言ったじゃないの。こんなところで油売ってないで、ほら職員室入った入った」

「は、はい!ただちに!」

「へーい。じゃあなキバ」

「…………おう」



私はキバの顔が見ることができずに、急いでカカシ先生を追って職員室に入った。












修羅場の始まり








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