17、いのの場合2





何故だろうか、足取りが軽く小走りになまえの家に向かう。
気が付けば鼻歌なんかも歌っちゃったりして、相当私ったらご機嫌であるのは確かね。


「ふふふ!」


原因はわかってる。
先ほどのシカマルとの会話を思い出してはこうやって一人ニヤニヤしているのだ。



「気になるの?」

「き、気になるっつーか、だから心配ぐらいすんだろって」




ありえないことよ!
だってつい先週まで会話だってしたことないって、
ただただ、気持ち悪いぐらいにシカマルを見ることしかなかったあの子とシカマルが!





何回か言ったことがあった。
そりゃあ中学入ってから一言も喋らなくなったけど一応シカマルとは幼馴染なんだし、
取り持ってあげようか?って。
でも、


「ううん、」

「どうして?ありえない!」

「いいの、見てるだけで」

「……そこまで言うなら無理強いしないけどさ、ほんとにいいの?」

「うん。ありがとね」

って笑ってさ、また楽しそうにシカマルを眺めるの。



私にはよくわからなかった。見ているだけでなにもしようとしないなまえ。
それだけで良いっていうなまえ。
友達にさえなろうとしない。見てるだけでいい。
同じ恋をしてる者として、理解できなかった


だけどさ……、本当に好きだったのあの子はシカマルを。
だから本当に嬉しいんだ。本当に良かった。
















――――ピンポーン。


家の前について、インターホンを押す。
数秒後、久しぶりに聞く年老いた声が聞こえた。


「はい?」

「あ、山中でーす!」

「あら、いのちゃん?ちょっと待っててね」

「はーい」



お行儀よく返事を返すと、玄関の扉が開いた。
ゆっくりと出てきた人物に私は笑顔を向ける。


「おばあちゃん、久しぶりー!」

「久しぶりねえ、いのちゃん。あの子のお見舞いかい?」

「うん。」

「ありがとうね。ささ、上がってちょうだい」

「はーい」




部屋に招いてくれるおばあちゃんに笑いかける。


なまえはおばあちゃんとおじいちゃんの3人暮らし。だからいつも笑顔で迎え入れてくれるのはおばあちゃん。
だからかな、なまえって年寄りの人を見かけるとすぐ助けに行っちゃうのよね。私がなまえを尊敬するところでもある。







階段前でおばあちゃんと別れて私は慣れた足取りで部屋へと向かう。
コンコンとノックをして「開けるわよー!」と同時に扉を開けると、私は絶句した。





「………あ、あんた……!なに、そのか、顔…!」

「……い”の”……ぉ!」

「目腫らして!顔パンパンじゃない!」

「……ううう…。」

「まさかあんたずっと泣いてたとか言わないわよね…」

「……だって……―――、」
































「なななななんて、今なんて言ったのよ」

「だから…、奈良シカマルが金髪美女とちゅー………」

「が、外人!?」

「違うっての!……ってこんな時にツッコミさせないでよ。」

「ご、ごめん………、」




なにをそんな目を腫らして泣いてるのよ、
さあ言ってみなさい。
どんなことで悩んでいるって言うの。
どうせまた変なことしてシカマルに嫌われたー!って騒ぐんでしょ、


って、バカにしていたら…、




めちゃくちゃ深刻だった!






「そんで、他にも幼馴染には告白されてっての?」

「…う、うん」

「キバってシカマルたちと一緒につるんでるヤツでしょ」

「うん…、」

「ここ3日にそんなことがあったのね」


心底同情してなまえの背中を擦ると、なまえはまたその腫らした目からボトボトと涙を落としていった。
釣られて泣きそうになるのをグッと我慢して、テーブルの上に置いてあったティッシュをそっと渡した。
受け取ったなまえは相変わらずぶさいくに「ズズズー」と色気もなくかんでいた。


「泣きなさい。こういう時は泣くのが一番いいんだから」

「う、ううっく。い、い゛の゛お゛…!」

「よーしよし。いい子いい子」


今度は頭を撫でると、ガバッと抱きついてくる。
そんななまえの姿を見て私は先ほどから湧き上がってくる気持ちと向き合った。



「……でも、そう。シカマルがねえ、彼女いたんだ……、ふーん」

「へ…、?」

「あのね、私ここ来る前にシカマルとバッタリ会ってね」

「…え!」

「あんたのこと心配してた。」

「…………、」

「だからてっきり私…」




シカマルはあんたのこと好きなのだ、と……





「ううん。なんでもない。いいから泣きなさいとことん泣きなさい」

「……うん」




…私はバカなの。
考えが少し単純すぎた。
風邪引いて心配するっていうのが恋とは限らない。
友達だってそう思うわよ。
そんなこと、ちょっと考えればわかったはずなのに、

だけど浮かれて舞い上がってしまった。勝手に。


それがどうしても許せなかった。


この子がもし、泣いてなかったら?
私はなんて言うつもりだったの?


「シカマルあんたのこと好きかも知れないわよ!」


そんな言葉を軽々しく言ったあとに、シカマルに彼女がいるって知ったら…、


単純すぎた自分が許せなかった。





泣きじゃくるなまえの頭を黙って撫で続ける。
この子は今直面しているであろうこの感情を想像するだけでゾっとした。
失恋。
言葉通り、失った恋。
辛いと思う、悲しいと思う。

だからこそ私がしてあげることはこうして傍にいることだと思った。












いのの場合2








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