デート中。
「まだかよ…、」
ゲンナリした声が聞こえて振り向くと、まさに声ピッタリに眉を寄せて怖い顔をしてるシカマルが立っていた。
何故そんな顔をされているのかわからず首を傾げてまた前に向き直る。
「つかいい加減帰ろうぜ、疲れたマジ」
「………。」
「無視か」
「うるさいなあー。今どっちにしようか迷ってるところなの!」
そう言うとシカマルは私の肩越しを覗いて、両手に持っていた服を交互に見た。
「どれも一緒じゃねーかよ」
「ああん?一緒じゃないもん全然違うじゃん」
まったくどこ見てんのって付け加えたら小さく舌打ちされた。やれやれ。
「もうなんでもいいから早く頼むぜ」
「あれ、シカマルどこ行くの?」
「外。こんなとこいれるかよ」
まあ確かに女性専門の服屋さんに男のキミがいるのは恥ずかしかろう。でも一人でいるんじゃないんだしさあ、一応デートだよシカマル君。なにそれ感じ悪くない?いのならそう言うと思うけどなあ。
「まあいいけどさあ、感じ悪くなあい?」
いのの真似をしてみた。まあ私は正直一人の方がゆっくり選べるから気は楽なんだけどさ。
「………。」
冗談で言ったつもりだったけどシカマルは素直にその場にとどまった。腕は組んで不満そうな顔はしてるけど。
そんなシカマルが可笑しくてつい笑ってしまう。
そういうとこ優しいと思う。優しいと思うから可笑しくって笑ってしまったのだけど、シカマルはバカにされたのだと思ったのか、「笑うな」って怒られた。
「いいから早く選べよ、」
「わかってるよ。シカマルもさ一緒に悩んでよ」
「はあ?じゃー、こっち。ハイ決定。買ってこい」
「ちょちょ、なにそれ!」
「なんだよ、決めてやったじゃねーかよ。」
「適当じゃん。それ!」
「…めんどくせー、」
「なに!」
「あーハイハイ悪かったよ。じゃあ、こっちしろよ。」
「ちょっとー!完璧に適当に言ってんじゃん」
「俺からしたら両方一緒に見えるんだからしょうがねえだろ、」
「全然違う!色も形も違う!」
「一緒じゃねえかよ、色褪せてるかの違いだろ」
「色褪せてるのと色褪せてないのってのが大きいの!」
「はあ?なんだそれ、めんどくせー」
「めんどくさくないの!買うなら納得したいの買いたいじゃないの。お金もったいないでしょ」
「あーそうか。わかったからよ、なんでもいいから早く決めろ」
「なんだそれ、その言い方ムカつく」
「なんだよ、」
「ふん。もう一人で決める」
ヘソを曲げた私を、シカマルは小さくため息をしてくるりと私から背を向けた。
「じゃあ、俺は帰るぜ!」
「どーぞ!」
「………、」
私もプイと顔を背けたけど、横目から見えるシカマルは一向に動こうとしない。
「なによ、」
「…まじで、行くぞ」
「……。」
「帰るぞ。ホントに」
少し振り向いて私を見るシカマルの顔は少しだけ困った顔をしているように見えた。
そんな顔を見てしまった私は少しだけ一瞬、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「なんか言え。俺マジで帰るぞ。いいんだな」
「…………、」
「いいのかよ、コラ」
「…………ぷ、」
「…あ?」
「ぷ、ははははは!」
なんとも言えないシカマルの姿にすごく可笑しくて笑いが込み上げてきた。
ヤバイ、可愛い。
止まらない笑いにシカマルはこれでもかってぐらいに眉間に皺を寄せて睨んでる。
あーだめ!お腹痛い。
「なんだよ、言っとくけどな!お前を置いてくのもなんだと思ってよ、おい聞いてんのか」
「ガハハハ!お腹、いったい…!」
「聞けコラ!」
「わかってるよ、わかってるけどさ…、可愛くて…ははは!つ、つい!」
「可愛いとか言うな」
「はー、おかしかった。」
目じりの涙を拭いて、一息をつく。
シカマルは先ほどとまったく同じ顔をしながら私をまだ睨む。
「ごめんね、シカマル」
「お前なんかしらねー」
そう言いながらもその場を動こうとしないシカマルに私はまた「ぷ、」と漏らした。
デート中。
「お前これ以上笑ったら本気で…!」
「帰っちゃうの?」
「…!」
面食らったシカマルの顔にやはり我慢はできなかった。
→あとがき
1万HITアンケートにて、
「デート中」と「可愛いシカマル」
のシチュ内容を元に書きました!
アンケートご参加誠に有難うございました^^!
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