15、シカマルの場合




「持って来たっスよ」

「おー奈良。ちゃんと持ってきてえらいねー、」


放課後、課題を提出するため職員室に足を運んだ。
カカシの席の横でひらひらとプリント揺らし見せると、
カカシはニコリと笑顔を見せただけで、プリントを受け取ろうとはしなかった。


「…もしかしてみょうじのヤツまだ出しにきてないんスか?」

「んー、というより出せないんだな」

「え?」

「休みだからあいつ今日。風邪だってさ」

「風邪ぇ?」

「そう。ま、そういうことだから明日でいーからそれ、」

「……ああいや、めんどくさいんでもう渡しときます」

「ん?そうか、じゃあもらっとくよ」

「んじゃ、失礼しますっと、」


「あ、奈良」

「まだなにか用っスか?」

少しめんどくさそうな顔で振り向けばカカシはなだめるような顔で笑った。


「いやーあのな、………まあいっか」

「は?」

「なんでもない、もう行っていいよ」

「……んじゃあ失礼させていただきますよ」


カカシが言いかけたことを特に気にすることもなくテキトーにそう言って俺は職員室を出た。






グランドへ向かう廊下を歩いているとふと言葉が漏れる。


「風邪ねえ……、」



バカは風邪引かねえ、なんて嘘だな。

くくく、と自然と笑いが漏れた。


































「あ、シカマル」


グランドに着いてあいつらのほうへ歩いていると、俺に気づいたチョウジが手を振って迎えてくれた。

ちらりと横を見るとボールを小さく転がしているキバが目に入る。
ああ、つうかあいつ俺にメールよこしてねえし、キバなら知ってるかも知んねえから聞いてみっかな、


そんなこと考えているとキバと目が合った。



「な、なんだよ、」

俺と目が合うなりそう言って顔を強張らせたキバを不思議に感じて少し驚いてしまった。


「お前こそなにそんな強張った顔してんだよ、なんかあったのか?」

「あ、いや…その、お前がなんか言いたそうな顔で近づいてきたからさ、」


そうぎこちなく笑うキバにまだ不信感を抱きながらもとりあえず「ああ、」と返事を返した。




「……なんか、カカシんとこ行ったらよ、あいつ今日休みだって言うから」

「え!?」

「風邪だってさ」

「風邪…」

「ああ。だから提出は明日でいいってよ。まあめんどくせえからもう渡したけどな、」

「へー…、」

「んでよ、」


そう言って俺は携帯を取り出した。



「あいつのアドレス教えてくんね?」

「……え、なんでだよ」

「先週あいつに俺のアドレス教えただけで、空メール送れっつったのにこねえし」

「………、」

「まあ風邪引いたつってるし、お見舞いメールでも送ってやろうと思ってよ」



そう言うと自然と笑いが込み上げてきた。

俺からメールが来たらどんな顔すんだろうな、
いつも見せるおもしれー反応でもすんのかな、


とりあえずキバから聞いたら送ってみっ―――、









「教えたくねえ」






「……あ、?」





返ってきた言葉に思わずキバを凝視してしまった。
キバは眉を寄せて俺をただ見つめていて、
なんかよくわかんねーけど、すごく苦しそうだった、




「…まあ、別にいいけどよ、」


教えたくないと言われた以上俺は自分の携帯をポケットにしまった。
するとキバの目が少し揺れた。


「なんで教えたくないのか…、聞かねーのか」

「はあ?聞いて欲しいのかよお前、」

「別に!」

「なんだよお前…」


いつも以上にめんどくさい反応をするキバに少し動揺してしまった。
意味わかんねーぞたく。


キバもそっぽを向いてしまったので俺もこれ以上その場にいるのはめんどくさい気がしてキバから背を向けた。
けどなんだかキバが俺の背中を見ているような気がして振り向くとやっぱりキバと目が合った。


「なんだよ、」

「やっぱ言うわ」

「あん?」







「俺、なまえ好きだから」



キバの顔が急に真剣で思わず目線を外せなかった。



「んだよ急に、」


「だからそういうことだってことだよ!」

「………。」

「だからお前に教えたくねえ」


「…わかったよ。悪かったな」


じっと俺を見据えてそういうから思わず肩がすくんだ。



「あ、いや別にだ、な…えっと…」


俺の言葉にキバは急に目を泳がして困った顔で自分の頭を書き出すので思わず「ぷ」と笑いが漏れた。
その姿がいつものキバだったので少しホッとしてしまった。


「別に気にすんなよ、俺も気にしてねーし、」


なだめるようにキバの肩にポンと手を置いて笑いかけるとキバもホッとした顔で俺を見ていた。








シカマルの場合





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