小さな思い




「私って頼りないかな…?」

そう小さく呟けば眉を苦しげに寄せて私を見る彼の姿。
そんなこといつもの私なら言わないし、言ったとしてもシカマルの前でなんて。
だからだと思う。
そんな言葉を言わせた自分に傷ついた顔をしてるシカマルを、ただ私は眺めているしかなかった。


責めたいんじゃない。別に責めているつもりもない。
ただ堪らなかった。
どんどん大人になっていくシカマルを近くで見ていることが堪らなく辛くなった。
だって「大人」って頼ることを知らないんだもん。



サスケ君の暗殺が決まったあの時、自分からサクラの説得役に名乗り出た。
自ら傷つきに行くようなものだ。
皆が思ってるほどシカマルは強くない。
人に宣告を告げることがどれだけ苦しいことなのか考えるだけでもゾっとした。




サクラがいるであろう綱手様が眠っているテントへ向かおうとしているシカマルのベストを思わず掴んだ。
ちょいと横を向いて目だけが後ろに向けられた。
その表情は私になにも言わさんとしている、覚悟ある目だった。



「……サクラのところに行くの?」

力なく掴んだベストを離してポツリと呟いた。


「…サスケのことはもう決まったことだぜ」

「そうじゃない」

「けどお前いのと同じ顔してんぞ」

「違う、」


ちがう。


私が知らない間にどんどん大人になっていくシカマル。
私はまだ子供のまま。
同じ中忍だというのに、外も中身も私はまだ下忍のまま。
シカマルはいつの間にか背負うものができて、どことなく華奢だった背中がすごく大きく見えた。



「全部背負う必要はないんだよ、」

「なんだよ急に…?」


「サクラにだって別にシカマルが言う必要ない」

「あれは俺の役目だ」

「違うよ。シカマルじゃなくてもいい」

「なんだよ今日はやけにつっかかってくんな。」

「違うの、ちがう…」

「違う違うってなあ…。なんだよお前何が言いてえんだよ。…何もねえなら行くぞ」



「違う…、」



違うってば。私はただ…、










「私って頼りないかな…?」


その言葉にシカマルは全てを理解したように苦しげに眉を寄せた。
違う、そんな顔させたかったんじゃない。私はただ、






「心配なんだよ、」










小さな思い










気が付けば、
シカマルの背中をそっと包み込んでいた。












→あとがき

滅多に書かない原作沿い。


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