8、無交思考.1
「シカマルー!」
「お前トイレ長げーぞ、ったくよ。とっととグランド行こうぜ。ナルトもチョウジももう着いてんじゃね?」
特にナルトなんか遅くなるとうるさくてめんどくせーからなってブツブツ言ってカバンを持とうとした俺に、キバは首を振った。
「あ、違うんだわ」
「あ?」
「お前呼んでるヤツが廊下にいるから行ってくんね?」
「はあ?」
「俺、先にグランド行ってっから!」
「は、ちょ、おいって!」
風のように走って教室から出ていってしまったキバの後ろ姿を俺は呆気になってため息をした。
チラっと全開に開けられていたドアを見れば、確かに誰かが立っていて、
「…あ〜あ。めんどくせーの、」
ポツリと呟いてから、しょうがなくカバンを手に取って歩き出した。
教室から顔を出して、ぶっきらぼうに「なに?」と声をかければ、そこに立っていたヤツに少し驚いた。
だって、そいつは、
「……………て、お前」
「な、なんでしょうか…?」
毎朝教室からグランドで遊ぶ俺たちを見てる女が立っていたから。
キーン、コーン………。
「腹減った!早く屋上行こうぜ!」
やっと終わった、
エビスの授業はなげーし、寝るとぐちぐちうるせーし、なんつーかドッと疲れる。
俺は机にへばりついて一息つこうと目をつぶると、もっとうるせーのが来た。
目をチラと開けて軽く睨んでやる。
「んだよ、」
「……なんでもねーよ」
弁当を抱えたキバは、睨んだ俺にさらに睨みをかけてくるので、俺は諦めてカバンから弁当を引っ張りだして立ち上がった。
「あ、そういや、なまえ昨日お前に何の用だったんだよ?グランド来んのも遅かったし」
「なまえ?誰だそいつ」
屋上への道のりをだらだら歩く俺とは対照にせっせと2歩先を歩くキバ。
キバは軽く後ろを振り向きがちに聞いてきたので、俺は少し首を傾げた。
「昨日お前呼んだヤツだよ、放課後」
「ああアイツか。いや、なんつーかめんどくせーことになってよ。………ったくカカシの野郎が、」
「ハハハ、そりゃあ災難だったな。……そういやなまえも先生に頼まれてーとかなんとか言ってたわ」
「知り合いかアイツと」
「おう、幼馴染つーやつ」
楽しそうにキバは笑う。つうことは仲がいいってことだな、
「お前めずらしーのな」
「なにが?」
「俺も幼馴染っつーのいるけどよ、全然仲良くねーぞ。学校で会っても声かけもかけられもしねーし」
「あー、山中…、だっけ?」
サスケ追っかけてるヤツだよな、なんて付け加えるのでオレは小さく苦笑いする。
「俺だけじゃねーけど、他の連中も女の幼馴染は自然と話さなくなるつーし」
「そんなもんかね、」
「そんなもんなんじゃねーの?」
「ふーん、」
「…………なるほどな、」
「あ?なんか言った?」
「いーや、」
さしずめ、アイツは幼馴染であるキバを見てたってことか…、
でもただ幼馴染見るために毎朝毎朝いるかね普通。
幼馴染ならそんな遠目で見るより、話かければいいはずだし、いくらクラスが違うからって。
あーでも女の考えることはわかんねーからな。
それにアイツすげー変わってるっぽいヤツだったし。
ずーと百面相してっしなぁ………。
「おっせーぞ!」
屋上の扉を開けると、先に着いていたナルトが割り箸を突き上げて怒っていて、
ナルトの隣ではすでにお弁当を広げて食べているチョウジの姿が目に入った。
「へいへい、悪かったな」
めんどくさいので適当に返事をし、チョウジの隣にドスッと座わりチラっと横を見ればあんな大きな弁当も残りわずかの量だった。
「うるせーよナルト!俺らはチャイム鳴ってすぐ来たっつーの、」
「そうだよナルト、ボクたち終わるの早かったんだからさ」
「つかチョウジは先に食いすぎだぜ!」
「待てないよ、お腹すいてんだから」
「……だ、な」
チョウジを見るキバとナルトはやっと落ち着いたのか言い合いをやめて自分の食いもんに目を向けた。
俺はとっくに弁当を広げていて、弁当の中身を見て思わず眉間に皺を寄せた。
かあちゃん、昨日と同じおかず入れるなっつったのに…、
「そういえば、昨日シカマル来るの遅かったね、」
「あーなんか、カカシ先生のお呼びだったみたいよ」
しかめっ面で弁当を見ていると、チョウジが最後の一口をもぐもぐしながら聞いてきたが、
弁当に気を取られていた俺よりも先にキバが反応して答えた。
「カカシ先生の?」
「…あー、めんどくせーことになってよ、」
「めんどくさいことってなんだってばよ?」
「えー?いやあなんかよ、この前カカシの授業で出された宿題出してなかった、つかしてなかったら、」
「お前やってなかったの?」
「つか、キバがちゃんと出してるほうがおかしいぜ」
「カカシ先生のは出そうぜ、」
「………お前カカシ苦手だろ」
「………だってよ、お前みたいになんじゃん。呼び出しとか」
「ボクもカカシ先生のはちゃんと出すよ」
キバとチョウジは顔を見合わせて頷いている。ま、確かに…、なにも言えねーな。
なんて思ってちらりとナルトを見ると、顔を真っ青にしていた。
「ナ、ナルトどうした」
「俺ってばよ………」
「あ、わかった!お前んとこ1組のカカシ先生のパシリは、」
「うん、ナルトだよ」
「やっぱりなー!」
とキバはガハガハと大口開けて笑った。
「そんな笑うなってばー!」
「お前確かに、カカシに目つけられそうだもんね、ガハ!ウケる!」
「すごいいいように使われてるよ、」
「ガハハ!ナルトがカカシのパシ、やべー!想像するだけでも腹いてーよ、」
「うるせーってばよ!」
「あ、でもシカマルはカカシ先生に目つけられてる割りにはマシだよな、」
「なにが?」
「ナルトはいいように使われてんだろ、シカマルは特になにもだよな…、呼び出し以外」
「……あー、だな」
「聞くによれば、ひどくパシられてる子が違うクラスにいるって聞いたことあるよ、ボク」
「え、かわいそうだなそいつ」
「誰だってばよ、」
「え、ホラ、いつもグランドを………、」
「「グランド?」」
ナルトとキバの声が重なって、これまた面白いほど二人は首を傾げている。
なんだこいつら、やっぱり気づいてねーの、
「俺ソイツと今一緒に課題やらされてる、カカシに」
「え、その子と?」
「おー、」
「へー、どんな子?」
「………変なヤツ、だったな」
「あはは、そうなんだ。まあ毎朝いるぐらいだしね、変わってる子なのは納得」
ふと気が付けば、キバとナルトは食べ終わったのか向こうの方でゲラゲラ笑いながら遊んでいて、
俺はそんな二人を軽く笑って、残りの弁当に手を付ける。
「なんか、そいつキバの幼馴染らしいぜ、」
「へー、そうなんだ!」
「ああ」
「じゃあ、キバ見てたのかな!」
少し興奮したチョウジが俺にグッと近寄ってきたので、軽く後ろのめりになりながら苦笑する。
「ま、そうなんじゃねーの。キバが言うには仲いいみたいだし、」
「ってことは、相当その子キバのこと好きなんだね!」
「毎朝見てるぐらいだしな、」
「乙女だね、いいなあ、ボクも恋愛したい…、」
「はは、いつかいいヤツできるぜ、お前ならな」
「へへ」
テレながら笑うチョウジの腕をからかうように突いて、空になった弁当を片づけた。
無交思考.1
→あとがき
シカマルとキバは3組。
ナルトとチョウジは1組。
ちなみにサスケとサクラも1組です。
主人公はまだ何組か決めてませんが、階が違うのでたぶん相当クラスは離れてます。
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