7、自虐的虚想




「………俺も好きだぜ」




「え、……………えええええええ!!」





「な、なんだよ」


「す、好きって、好きって…!好きってその……!」









「ああ。美味しいよな、このジュース」




























「……………………え」


「あ?」















「……………嫌い」

「え?」


「そんなもの嫌いだー!」



「はあ?お前今好きって言ったばっかじゃねーかよ、」



「もう帰ります。さようなら」

「え、なにまた怒ってんだよ」


「怒ってません!呆れてるんです!」

「あきれって……、お前が俺に呆れるってか、」

「そーです!」



「はあ?意味わかんねえ…」



本気で呆れた顔で私を見てる奈良シカマルに思わずギロリと睨みつけると、
奈良シカマルは眉を下げてビクッと首を引いた。



プリントと筆箱を乱暴にカバンに仕舞い、ドスドス歩いて教室のドアに手をかける。





「では、また明日!」

「あ、ちょ、待てって、」




―――バタン!












「………ったく、めんどくせー女だな、」



































「プっ」


「…いの、」



「ハハハハハ!!ひー!お腹痛い!痛い痛い痛い!」


「人の頑張りを笑うのやめてもらえます…?」


「つかなにその少女漫画的パターンは!それって現実でも起こったりすんのね!」



「………だよね」



「つかあのシカマルがねえ。あいつあんなに鈍かったっけ?」


「私も驚きだよ!まさか流されるとは思わなかったし。
ね、あの状況ジュースが好きって聞こえる!?聞こえんのかな!?」



「えー…?でもシカマルはそう聞こえたんでしょ、」


「う……」


「せめて「シカマルが好き」って言えばよかったのよ」

「……確かにそうだけど、そこまで鈍っちょだとは…」





だって、キバやナルト君に比べたら奈良シカマルは感が良いと思ってた…、

ああいや?いやいや待てよ…、



「本来、奈良シカマルも鈍いんじゃ………、キバとナルトくんがあまりにもひどいからそう見えないだけでさ」


「あー、それは言えてるのかもね」







「………………私の頑張りがあ、」



ポテっと顔を机にへばりつける。




「へこむ…」

「まあドンマイ!次よ次!」


「いの…、なんでそんなポジティブなの」


「逆になんであんたはそうネガティブなのよ」


「…う、」


「一回告白したんだから、2回、3回告白するなんて同じことでしょ?」


「………どれだけ勇気いったと思って」


「あんた思わず言っちゃったってさっき言ったじゃない」


「………まあそーだけどさあ、」




「あーうざい!もうあんたってほんとうざいわね!」

「なにー!」


「今度は流されないように告白すればいいだけでしょうが!」

「だからそういう意味じゃなくて、私の気持ちの問題で!」


「だー!うるさい!そんなうじうじするなら今から告白してこーい!」



「そんなノリでできるかー!」


































もう!いのってば本当に強い女よね。
そこがちょっと羨ましくて憧れるんだけど、


まあ。私はいのと違って、うざい女だし。



ついうっかり告白しちゃったとは言え、あんなあっさり流されるとさ……、





また流されるんじゃないかって、


そう思うと、怖いんだよ。













トボトボと廊下を歩く道のり。

考えごとしてて、どこに向かおうとしているかわからなくなってきた。

頭は常に奈良シカマルが占領してて、私の気持ちとか、昨日の告白のこととか、


とにかくごっちゃごちゃで。






「ふご!」



ちんちくりんな頭でいろいろなことを考えてるとろくなことがない。

私は俯いて歩いていたせいで、前からなにか来ていたことに気づかなかった。



そのままその"なにか"にぶつかって思わず声が出る。
でもあまり痛みがなかった。



慌ててぶつかったその"なにか"を確認しようと顔を上げると、思わず顔が引きつった。






「ゲ、」



「きゃー、みょうじったらだいたーん」

「カ、カカシせんせ…!」




どうやら私はカカシ先生のお胸にぶつかってしまったらしく、気づけば私は先生のお胸の中に居た。


カカシ先生はというと「きゃー」なんて言いながら、全然棒読みで言うし、顔はいつものやる気なさそうな顔だし、

でもその目はどこかキラリと光るものが見えた気がした。






これは、ヤバイ。

私の野生本能が危険信号を出す、が。時はすでに遅し。



そのままガシと肩を抱かれてしまい、無理やりカカシ先生が行く道へと連れて行かされる。








「ちょ、カカシ先生!」

「ん〜?」

「ん〜?じゃないですから、離してくださいよ!」

「みょうじが俺の胸に飛び込んで来たんでしょ」

「ちっがーう!ぶつかっただけだってのー!」

「俺にぶつかるなんていい度胸してるな、その度胸を俺は買ってやりたいよ」


「いやいやいや、離せコラ」



「いいからいいから」

「いーやーだー!」































行く道中私はあらゆる方法で抵抗してみた。が、
やはりあのカカシ先生に勝てるわけなくあっけなく撃沈。

そうこうしていると、カカシ先生は足を止めた。


ふと立ち止まった部屋のドアを見つめると、そこはカカシ先生の準備室で。







私ってばもうイヤな予感しかしません。
ああ神様、どうして私はこの憎きカカシ先生に目を付けられたのでしょうか、


あ、今お前が授業まじめに受けないからでしょって聞こえた気がする…、














「はい、」


ドサッと置かれたのは大量の教科書。
チラっと裏を見ると、クラスと名前が書いてある。
どうやらこれ3クラス分あるぞ…!





「俺ね宿題出したのはいいんだけど、採点しなくちゃいけなくてさ、
でも俺最近本買っちゃってそれに読みふけってたら採点すんの忘れちゃってさ〜、
この通り溜まっちゃって溜まっちゃって」



「…………」


「いちいち教科書開くのめんどくさいからさ、みょうじ開いてってくんない?P26だから。」


「なんで、私が!」


「ん〜?」

「…………、」



「ハイ、ホラ開いた開いた」


そう言ってカカシ先生は赤ペンを手に取って私が教科書を開くのを待った。



早くしてよ、お前のせいで終わんないでしょ。なんて言いたそうなそんな目。

だいたい自分がまいた種じゃん!
採点してなかったのだって、自分が悪いんじゃん!しかも本って…本ってえ………!!




ギロリとカカシ先生を睨むけど、全然効いてなさそうで、
ホラさっさとしてよ。なんて眉を下げられる始末。




もう本当にいつかやっちまうぞ。やっちまうからな!覚えてやがれー!




私はぶすっとした顔で、指定されたページのところで開いたまま教科書を積んでいった。




















「で、」

「え?」



ぶつぶつぶつ文句垂らしながら教科書を開いていっていると、急に話をかけられた。



意味がわからなくて、思わず手が止まる。
カカシ先生を見れば、相変わらず教科書に丸付けたりバツつけたりしてて、
私の顔なんて見ていなかった。


けど耳は私の声を聞こうとしているように見えた。






「……なにがですか?」


「ん?いやあ、なんだか悩んでる顔してたから、さ」


「…………!」


ガビーン!なんて効果音があれば今私に着けてください。
カカカカカシ先生が、生徒の悩みを!しかも私の悩みを聞こうとしてるというのですか…!





「先生熱でも…」

「失礼だねキミは」


「……だって、」



「俺も一応教師だし、目の前であんな顔されたらほっとけないでしょ」

「………、カカシ先生…」

「ま、いいお手伝いさんが欲しかったってのもあるけど」

「…………」


いい先生かもとつい先ほど思ってしまった私を抹殺したい。あー恥ずかしい!





「ま、話してごらんよ」

「………別に!"先生"に話すことじゃない、です」



「あーみょうじのくせに恋愛か、」

「やめれ。真顔で言われると恥ずかしいわい」




「ま、いいからいいから。別にそんな話でも。聞いてあげるからさ」

「…………カカシ先生それで私をまた遊ぼうとしてるんじゃ」

「ほんと失礼だねみょうじは」



眉を下げて笑うカカシ先生に、少し心が揺らいだ。

この人は、たぶん…、本当に心配してくれてる…と、思う…。

私はちょっとためらってから、ぽつぽつ喋りだした。









「……好きな人に、告白したら流されちゃったんです、」

「…へー、」


「その前にその人私にジュース買ってきてくれて、」

「うんうん」


「そのジュースが好きって意味に捉えられちゃったようで、」


「んー、」



「まあそれはそれでいいんです、しょうがないかなって。でもなんか引っかかるというか…、」


「うん、」



「なんか、ちょっと違うというか…」





そこまで言って私は口を閉じる。
昨日の出来事を思い出してへこみがまた襲ってきた。

ただでさえ私はまだ気持ちの切り替えをできてないというのに…、


それなのに私ったらカカシ先生なんかにこんな事話して何してんだろ……、







「なーんて、ははは」


「……空元気は体に毒だぞ」

「え、」






びっくりしてカカシ先生を見ても、先生は相変わらず採点の続きをしているのに、
無理して笑顔を作ったことに気づくなんてさ、なんか…、ずるいってば。



私はカカシ先生から視線を逸らし、目の前に積まれた教科書を手に持って、開いていく。




「……その人ってばすごく頭が良くて、キレがいいと思ってた。だからそんなバカなボケかますはずないんです…」

「………」


「それってつまりは………」


私はその先の言葉を飲み込んだ。
ぎゅっ、と唇を紡いで、流れそうになる涙を必死に堪えた。







「…お前が言いたいのは、そいつに異性として見られてないってことか」

「………っ」



「だから、告白として受け取ってもらえなかった。そうだろ?」


「…………はい」



「なるほどねえ…」



「彼は鈍くなんかないんです。ただ、私に告白されるなんてこれっぽっちも思っちゃいないんです………」








自虐的虚想







→あとがき
カカシ贔屓が止まらない!(笑)
私も好きな人に告白して流されたことありますヽ(゚∀゚ )ノ
本当に異性として見られてないんだと思いましたね。
そんな昔の私とリンクする主人公でした。




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