2、心拍数上昇




チ、チ、チ、チ、

妙に針だけの音が聞こえる時計をゲンナリした顔で私は見つめた。

気分的にはもう1時間ぐらい経過したような気がするのに、まだ30分しか経っていない。

普通、好きな子と二人シチュなんてさ、「あー、時間が早すぎる!時よ止れー」でしょうに。


結局あの後、無理やりカカシ先生から例のプリントを渡されて、職員室から近い私のクラスで課題をすることになった。

隣同士の席に座っているというのに、私の心はなにかといろいろ大変で、とても幸せを噛めれずにいる。



だってだってさ!隣でやたらシャーペンくるくる回してんだよ!イライラしてるじゃんね、これね?!

もう怖くて横見れません。






「お前さ…」

「え!あ、ハイ!なんでしょう…?」

相変わらずゲンナリした顔で時計を見つめていると急に奈良シカマルが話しかけてきた。
慌てて横を向けば、奈良シカマルは私の答案用紙を見ていて、


「早く手、つけろよ。終わんねーだろ」

「す、すいません…」

眉間を深く寄せて私を見るもんだから、少し縮こまった。


この状況に舞い上がるヤツがいるならそれはただのおバカだ。無論、私は舞い上がってなどいない!

だってさだってさ、喋るきっかけも二人きりなるきっかけも最悪じゃん。

私が悪いわけじゃないよ、もちろん!
奈良シカマルだって提出期限守らなかったわけだし、それの罰なわけだし?
だからさ私と奈良シカマル、2人が悪いんじゃん!


なのに、

どーして、私だけ悪いみたいな気持ちになっているのかな!私は!


それにさ、奈良シカマルを伊達に長年見てきたわけじゃないよ。

この人ってば、愛想もなければ態度も悪い。
性格が悪いってわけでもないけど、優しいってわけでもない。
とにかく、無愛想なヤツ。この奈良シカマルは。

だからだ、話かけれずにいたのはそれなんだ。

こんな態度取られるんだろうな、って考えると怖くて話掛けれなかった。

…チキンだと言ってくれてもいいさ。だって本当に、……その通りだもん。





「だーかーら、早くやれっての」

「あ、すすすすいません」

恐縮しながら謝って答案用紙にかじりついた…のはいいもの。M女高しか選択肢がない私にとったらだいたいそんな簡単に解けるわけもなく、
ノロい脳みその歯車がゆっくりとジ、ジジジと動きだすだけ。

数分考えては書き出してまた止まって、数分悩みに悩んで書き出す。
そんな私を横目に奈良シカマルはガタっと立ち上がった。



「じゃ、オレ帰るわ」

「あ、お、お疲れ様です」

「お前は?まだ帰んねーの?」

「私は、まだ…やるんで」

「ふーん、お前全然進んでねーもんな」

「ごめんなさい…」

「いちいち謝るなってのめんどくせー。冗談だろ」

「ごめんな…………う、うん」

「ったく、じゃーな」


奈良シカマルはポリポリ頭を掻いて、教室から出て行った。
彼がいなくなった教室は、急に外の雑音が響いて時計の針の音がしなくなった。


なんだかぐったりと疲れて、椅子に背をもたれる。


「うわ〜…、つつ疲れた」

今度は机に顔を埋めた。


好きな人と二人きりになるのがこんなに体力消耗するの…?
いや、体力というか精神かというか…もうなんかいろいろ肩凝った。


ふうとため息をしていると、外から「シカマル―!」と叫ぶナルトくんの声が聞こえた。

私は立ち上がりいの席に座って、窓の外のグランドを見る。


そこには玄関方面から奈良シカマルがキバ達のところへ歩いてる最中で、その彼に気づいたナルトくんが手をぶんぶん振っているところだった。

キバたちに合流すると、キバとナルトくんになにやらじゃれられてて、奈良シカマルはそんな二人を呆れたように構っているけど、
その目は決して冷たいわけじゃなくて、優しい目なんだ。

…それが私が奈良シカマルを好きなわけだったりする。

彼らに向けるその眼差しがあまりにも優しいから、私にもその目を向けて欲しいって思ったんだ、あの日から…。


私はじゃれ合って遊ぶ奈良シカマルたちをいつものように眺めた。

キバとナルトくんたちが楽しそうに奈良シカマルにちょっかいをかけていて、そんな2人に渋い顔をして抵抗する奈良シカマル。
チョウジくんはアハハなんて笑っている。

そんな4人にふふふ!なんて笑みを漏らしていると、キバたちのじゃれあいから逃れようとしている奈良シカマルがふいにこちらに目を向けた。


あまりにも突然なことに思わず数秒目が合ったまま、時が止まったような気がした。
はっ、と我に返った私は慌ててそこまで垂れかかっていたカーテンを引き、体を隠した。




「び、びっくりした……!」

胸に手を当てると心臓の音がすごい心拍数で打っている。

やばい、……!

恥ずかしくて私の顔は急上昇、たぶんすごく顔が赤いと思う。
目が合ったときの奈良シカマルの顔が、脳裏に焼き付いて離れないでいた。






心拍数上昇





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